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これは僕が大学生の時に友人のKと樹海に行った時の話だ。
僕とKは小中高と学校が一緒で、家も近所だった。
そして、僕もKも怖いものが好きだったため、休みの日はよく二人で心霊スポットへ行っていた。
といっても、二人とも霊感のようなものはなかったので、どの心霊スポットでも幽霊をみることは出来なかった。
ある日、Kがネットで凄い心霊スポットを見つけたと騒いでいた。
それがあの樹海だった。
Kの話によると、その樹海では自殺者や遭難者が数多く出ていて、幽霊の目撃証言なども多かったそうだ。
心霊スポットとして有名だった反面、絶対に軽い気持ちで行ってはいけない場所、としても有名だった、というのは後で知ったことだった。
テントや食料、コンパスなどを準備し、僕達は樹海へと向かった。
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樹海には、とても不気味な雰囲気が漂っていた。
到着してテントをたてるとすぐに、僕達は探索を始めた。
木の所々に打ち付けられている藁人形が、無数の釘が打ち付けられてボロボロになった見知らぬ人の写真が、命の気配を感じさせない静けさが、樹海の不気味さを引き立てていた。
何が起こる訳でもなく時間が過ぎ、日が暮れはじめたので、僕達はテントに戻り夕食を食べた。
そして、夜になるまで二人で話などをして、時間をつぶした。
外が完全な闇になり、そろそろ肝試しに行こうかと二人で話をしていた時だった。
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ぎぃぃぇぇぇええええーーー‼‼
外でこの世のものとは思えない程の凄まじい声が響き渡った。
人間の声にも聞こえたが、動物の声の様にも思えた。
あまりの声の大きさに近くで聞こえたのか遠くで聞こえたのかすら分からなかった。
僕とKは怖くなり、今日は早く寝ようということになった。
酒を飲んで布団に入るとKはすぐに寝てしまった。
一方僕は、あの声が気になってなかなか眠れないでいた。
深夜の0時を過ぎ、ようやくうとうとし始めた頃にKがむくっと起き上がった。
よく聞くと、ぶつぶつと意味不明なことを呟いている。
「いかなきゃ、いかなきゃ、いかなきゃ、いかなきゃ、いかなきゃ、いかなきゃ、いかなきゃ。」
寝ぼけているのかと思い、声をかけようとすると、Kがいきなりテントを飛び出そうとした。
止めようとして、腕を掴むと凄い力で引っ張られた。
まるで僕を引きずってでもテントの外に出ようとしているかのようだった。
大きな声で呼びかけても、Kはまるで反応を示さずにぶつぶつと何か言っている。
「呼んでる、いかなきゃ、呼んでる、いかなきゃ、呼んでる、いかなきゃ、呼んでる、いかなきゃ、いかなきゃ!いかなきゃ!いかなきゃ!」
これは本当にヤバイと思い、力一杯Kを殴ると正気に戻った。
「・・・、あれ、こんな時間にどうしたんだ?」
Kにさっき起きたことを話すと、全く覚えていないと言った。
とにかく早く寝ようということになり、二人で布団に入った。
眠りについてしばらくすると物音で目が覚めた。
見ると、懐中電灯を持ったKがテントから出ようとしていた。
慌てて止めようとすると、トイレに行ってくると言う。
今度は正気らしいので、気にせずに横になると外からKの悲鳴が聞こえた。
びっくりし外に飛び出すと、テントの少し先でKが、懐中電灯を地面に落として震えながら立っていた。
「どうしたんだ?」
するとKは一方の手で目の前を指差した。
落ちていた懐中電灯を拾い、目の前を照らすと。
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music:6
首、首、首、首、首、首、首首首首首。
一面生首だらけだった。
みんなふわふわと中に浮かび、それぞれ違った表情をしていた。
ニヤニヤと笑っている顔、無表情な顔、憎しみをむき出しにした顔、こちらを嘲笑うような顔。
それが気持ち悪さを、恐怖を増幅させていた。
体が動かないどころか声を出すことすら出来ずに、喉からはヒューヒュー、という息の漏れる音だけが響いていた。
恐怖で体が動かなくなるとはまさにこのことだと思った。
長い沈黙を経て、ようやく体が動くようになった。
長い沈黙といっても、おそらくは数秒程度だろう。
その数秒程度が今の僕にとっては、数時間にも思えた。
それほど、あの時目の前に広がっていた景色は常軌を逸していた。
俺は方心状態のKの手を掴み、一心不乱にテントに向かって走り出した。
走る僕の体にごつごつとした何かがぶつかる感触がした。
多分生首が僕の体にぶつかっているのだろう。
あの気持ち悪い生首が自分の体に触れていると思うと、吐き気がした。
なんとかテントにたどり着いた僕とKは、急いでテントに入り、入り口を閉めた。
その直後、テントに複数の生首がぶつかってきた。
テントが人の顔の形に歪み、元に戻る。
それを見ていると生きた心地がしなかった。
目をつぶりたいが、生首がいつテントを突き破って入ってくるか分からないので目をつぶれない。
そんな状況だった。
それほどまでに生首がぶつかってくる勢いは凄まじいものだった。
僕はそれを、必死に懐中電灯で照らし、目を見開いて見つめていた。
すると、一際強い揺れと音が響いたあと、僕の顔の前に生首が突き出てきた。
そして、その生首の口元が吊り上った。
テント越しにその生首が笑ったのが分かった。
その瞬間、僕は意識を失った。
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朝起きると、昨夜の騒がしさは消え、来た時と同じ、静寂がひろがっていた。
そして、Kの姿も消えていた。
僕は無我夢中で樹海を走り回り、気が付くと樹海の入り口に立っていた。
僕はそのすぐ後、警察にKの捜索を依頼した。
昨夜のことは言わずに、朝起きるとKがいなくなっていた、とだけ伝えた。
しばらく警察が捜索をしたが見つからず、あの日から5年経った今でも、Kは行方不明である。
作者海
初投稿です!
読みにくいところや、表現が下手なところがあると思いますが、気にせず軽い気持ちで読んでもらえると嬉しいです(^_^)