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これはTさんが中学生の時、喘息で入院中に体験した話です。
病状が回復し、落ち着いてきたTさんはテレビが見たくなった。
でも病室にはテレビがなく、一番近いテレビは小児病棟に併設されている
プレイルームだけった。
その部屋は、廊下側がガラス張りになっており、手動のスライドする扉は子供が勝
手に出入り出来ないように重く作られていた。
看護婦さんが「子供たちが寝て部屋が空いたら、そこでTVを見てても良いよ」
と言ってくれた。
Tさんは、扉を開け放した状態で、散乱するオモチャをかたずけつつ、テレビを見
ていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
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どれくらい寝たのか、ふと目が覚めるとテレビが消されていた。
時間は夜10時になっていた。
目をこすりながら、周りを見渡したTさんはおかしなことに気づいた。
この時間いつも話し声や足音がする病院内は、まったくの無音。
一晩中点灯している廊下の電気も消えていた。
shake
すると突然、部屋の重いガラス扉がひとりでに閉まった!
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びっくりしたTさんは扉に駆け寄り開けようとしたが開かない!
この扉にはそもそも鍵がない。それなのに開かないのである。
「あれ?」
「待てよ、もしかしてまだ夢を見ているのかな?」
と思い、自分の腕についている点滴の針を動かしてみた。
shake
「痛い!」
夢ではない。
Tさんは、とりあえず部屋のオモチャを壁際にある半透明のオモチャ箱にしまい
人が通るのを待つことにした。
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気を紛らわすため再びテレビを見ようとスイッチを入れたが・・・。
つかない。
テレビのコントローラーをいじっていると、視界の端っこで
何かが動いた!
「えっ?何?」
そこには先ほどのオモチャ箱がある。
そう思って振り向いてTさんが見たのは。
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shake
隙間なく詰め込んだオモチャ箱の内側から無数の手の平がビッシリ張り付き、その
間からは子供の顔が何人ものぞいていたのだ。
Tさんは息をのんだ!
それはまるで、めちゃくちゃに子供を箱につめんんだようにも見えた。
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しばらく恐怖で固まっていたTさんだったが、時間がたつとだんだん冷静になって
きた。
ふと・・・こう思った。
「子供に悪い霊はいないな」
Tさんはすぐさまそのオモチャ箱のふたを開け、再びオモチャを全部
部屋にばらまいた。
その瞬間、ガラス扉のほうから「カチッ」と音がした。
と同時に、重い扉がスッと開いたのである。
気づくともうオモチャ箱には子供の姿はなくなっていた。
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「そうか!」
Tさんは初めてこの出来事を理解できた。
「私が、箱の中にオモチャを押し込んでしまったため、中にいた子供たちの霊
が閉じ込められてしまったんだ。そして箱を開けオモチャを外に出すことにより自
由になった子供たちは扉を開け、私は帰ることを許されたんだ」と。
作者中島英理
友人から収集した実話です。