夜道を歩いていた。
友人と談笑しながらの帰り道。
街頭に照らされた薄暗い住宅街。
視界の悪い路地を歩いていると、ふいに友人が足を止めたので私も歩みを止める。
友人は一点を凝視して微動だにしない。
どうしたのかと尋ねても応答はなく、唇を引き結んでいる。
次第に、その唇がかたかたと震えだし、何事かを呟いているがそれが何かまではわからない。
ただ、どうしてだとかなんなのだとか呟いているように見えた。
再度、どうしたのかと尋ねてもやはり応答はない。
友人は私の顔を見つめたままじりじりと後ずさろうとする。
どうしたものかと、その震える体に近付こうとする手を払いのけ、友人は恐怖に慄いた様子で口を開いた。
「…どうして……なんなの…一体なんなの!?」
友人は私を見て叫んでいる、私には訳がわからない。
作者退会会員