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短編2
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とんとん

蒸し暑い夜だった。

仕事が長引いて、気付けば時計は深夜12時を過ぎている。

重い腰をあげてひとつ大きく背伸びをし、荷物をまとめて仕事場をあとにした。

田舎に住んでいた私は、電車に乗って最寄駅まで行き、そこから徒歩15分ほどかけて帰宅していた。

ほとんど人のいない車内はとても快適に感じた。カバンを隣に置いて足を投げ出し、眠たい目をこする。

ーー

ー…さすがに暗いな…

電車から降りていつもの帰り道についたが、普段の薄明るい時とはまるで違った道に驚く。

暗いというだけでこんなにも違うのか…。人通りは全くなく、消えそうな電灯がぽつりぽつりとあるだけである。しかし、ここを通らなければ帰る方法はないのだ。

生暖かい風

先の見えない暗闇

嫌に響く、自分の靴音

ー…早く帰ろう

そう思って足を早めた…時だった。

とんとん

!!!!??

右肩を、叩かれた。

思わず振り返ったが何もない。自分の歩いてきた暗い道が伸びているだけだ。心臓が悲鳴をあげている。

ー疲れてるのかな…

きっとそうだと自分に言い聞かせ、肩にカバンをかけ直してまた歩き出す。…足が、うまく動かない。

時折飛んでくる虫にさえ驚く。その度に足が止まってしまう。

とんとん

(ひっ)

声にならない悲鳴が上がった。気のせいなんかじゃない。…何かいる…?

手足が震えだした。

ー早く早く早く早く

とにかく早く帰りたい。帰らないと危ない。それだけが、頭の中を駆け巡った。

走り出したいのに、足が言う事を聞いてくれない。カバンは、肩から落ちたままだ。

とんとん

…ふと、気がついた。

足音がしない。聞こえるのは自分の足音と、荒い息遣いだけだ。後ろからは何も聞こえてこない。

こわい

急にその思いが強くなる。全身から冷や汗が流れた。

とんとん

無意識に、涙が溢れた。止まらない。

肩を叩く間隔が、狭まっているような気がした。この道が永遠に続く気さえする。

とんとん

…もう限界だ。

とんとんとんとん

足が、止まった。

とんとんとんとんとんとんとんとん

そうさせられているのか、自分の意志なのか分からない。

首が、ゆっくりと右へ回る。

…何もない。

深く、息が漏れた。こわばっていた体から、力が抜ける。

ーやっぱり、今日は疲れて…

とんとん

!!!!???

反射的に左へ振り向いた。

…そこには

左肩からは

下半身のない顔が、覗いていた。

Concrete
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