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高校二年の夏休み。
小学生からの付き合いのNと僕は別々の高校に入っていたのだが、両者食べ過ぎで10キロ程太っていた。
Nとは家も近所なので、二人でダイエットをしに堤防に来ていた。
21時。暗くなった空は不気味ではなく、ただただ夜を告げていた。
空気はジメジメと暑く、二人とも少し汗をかいていた。
いざランニングを始めるとなると、少し面倒になってくる。
しかし、Nがやる気満々なのでがんばってついていく。
僕は中学時代、陸上部だったので、まだ楽だったが、Nは帰宅部であった為かすぐにばてていた。
後10メートルもした所で四人程の家族が花火をしていたので、そこで一旦歩こうということになった。
花火をしている家族を通り過ぎると、二人とも顔を見合わせた。
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「大丈夫なん?」
Nは大きく頷いた。
「大丈夫。ちょっと足首痛いけど」
どうやらNは足を挫いたらしい。
近所に椅子があったので、二人は座り、僕はNの足首を心配していた。
一分もしない内にNは回復したと言い、僕の手を握って走り出した。
家の方に向かっていた。
「なんや、やっぱり帰るんか」
「そうやで、足首痛めたから仕方ないやろ」
Nは泣きそうな顔をしていた。
「どしたん?」
僕は再び心配になり、Nを止めようとした。
しかし、Nは僕の腕を強くひっぱり
「はよ帰るぞ。足首痛いねん」
足首が痛いなら歩けばいいだろうと思ったが、走り続けた。
music:3
ふと、後ろを見た。
先程まで花火していた家族は片付けをしている。
その、もっと斜め後ろ。
暗くてわからないが、何か聞こえる。
「なんなんなんなんなん」
女の声?
何かが追いかけてきている。
黒い何かが。
花火をしている家族は気づいていない。
「へへ、なんなんなんなんなんなん」
その何かはそう笑い、呟きながらすぐ後ろに迫ってきた。
music:6
「おい!もっと速く!」
Nの声で、はっとした。
全力で走った。
多分、5分程度。
僕はまた後ろを見た。
が、その何かはいなかった。
Nがいきなり止まった。
「なんやねん!さっきの!」
Nがブツブツなにか言っている。
こいつ、取り付かれた!と思った僕は怖くなり、何故か目をつむってしまった。
僕は恐る恐る目をあけると、真っ白な瞳孔を全開している生気の感じられない顔をした女がたっていた。
顔を傾かせて、からくり人形のような動きをしていた。
「へ、へへへ、なんなんなんなんなんなんなんなんなんなん」
悲鳴もあげることが出来ず、ちょうど横にあった階段を登り、二人必死に走った。
music:5
気がつけば、家の前で疲れはててNと地面に座り込んでいた。
「泊まっていけよ。怖いやろ」
Nは頷いた。
「そのつもりやったし」
「つもり?」
「うん。俺はダイエットじゃなくて、あれを見に行きたかっただけやし」
「は?ふざけるなよ!」
Nは少し微笑んでいた。
「まあ、お前の部屋で、落ちついてから話すわ」
僕達は家に入り、部屋に向かった。
親は寝ていたので、静かに。
部屋に入り、しばらくするとNが説明しだした。
Nとは高校が違うのだが、Nの友人Mが先日堤防で同じような出来事にあい、調べようとしていたとのこと。
そして、その高校に通う友人Kがそういうモノが視えるらしく、堤防の木の下に行けば何かわかると言われたらしく、面白半分で行こうとしたらしい。
怖かったので、近所の俺をついて行かせたということだ。
Nには、それが何かわからなかったらしい。
また今度、そういうモノが視えるKと一緒に行くと言っていた。
作者退会会員
読んでいただけたら幸いです。
みなさん、夏の堤防には気をつけて。