小学6年の夏の話だ。
地域の子ども会の行事で、少年自然の家というキャンプ施設にキャンプに行った。
4年生から6年生までの男女9人と保護者数名という、割とこじんまりとしたキャンプ。
普通に昼は森を散策し、夜は自分達で食事を作ったりした、ありきたりなものだ。
食事を終え、キャンプにつきもののキャンプファイヤーが執り行われた。
何か出し物をするわけでもなく、誰となく怖い話をしようと言い出し、怪談大会ということになった。
怖い本からのネタや昔からある都市伝説、人から聞いた話、自分の体験談などなど、一人一人披露していった。
俺はというと、本当は体験談をしたかったのだが、信じてもらえそうもないので、クラス担任から聞いた話を披露した。
やがて夜が更け、一通り怪談披露しきり、そろそろお開きという時だ。
「あれなに?」
俺の隣にいたK君が近くの木の上を指差した。
皆、なになに?といった感じでK君が指差した木の上を見上げる。
そこにはサッカーボールより少し大きめの黒っぽい何かがあった。
「なんだろあれ」
肉眼では周囲が暗いせいもあり、確認出来なかった。
保護者のひとりがその黒っぽい何かを双眼鏡で確認した。
「みんな早くバンガローに戻って!!」
大声で叫ぶ保護者。
皆何が見えたのか興味深々だったが、その保護者のただならぬ剣幕に恐怖を感じ、我先にとバンガローに駆け戻った。
俺は何が見えたのか気になって仕方がなかったので、どさくさに紛れ、双眼鏡を手に取り、その黒っぽい何かを見てみた。
見たことを後悔した。
その何かは
明らかに人の首
驚き思わず声を上げかけたが、グッとこらえた。
翌日聞いた話だと、子ども等がバンガローに戻ったあと、管理事務所の人と共に調べたらしいが、その時見えた黒っぽい何かはもうそこにはなかったという。
結局正体は鳥ということで片付けられてしまった。
本当のところは判らずじまいで、数十年経った今でもモヤモヤしてる出来事だ。
作者shuzoh