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これは、私の祖父から聞いた話です。
今から二十年以上も前、定年退職をした祖父は今まで苦労をかけてきた祖母に恩返しをしようと、家の手伝いをしたり、旅行に連れて行ったりしたそうです。
その行為を祖母も大変喜んだらしく、祖父が仕事をしていた時には頻繁に喧嘩をしていたのに、退職してから全くしなくなり幸せな余生を過ごしていたそうです。
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そんなある日、二人で近所のデパートに出かけ今で言うウインドショッピングを楽しんでいると、五歳ぐらいの男の子が泣いていた。
祖母は、すぐに迷子だと思い、祖父に迷子センターに連れて行こうと言いました。しかし、祖父は昔から子供が大の苦手で正直、連れて行きたくないと思い、母親が近くで探しているかもしれない、下手にここから連れ去るより放っておいた方がいいと言ったそうです。
それに対して祖母は激怒し、久しぶりの大喧嘩になってしまいました。
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そうこうしているうちに母親が現れたので結果としてはよかったのですが、祖母の機嫌は治らなかったそうです。
もちろん、祖父は自分が悪いのは初めから分かっていたのでひたすら、すまなかったと謝り続けました。
しかし、よっぽど腹が立ったらしく祖母はなかなか機嫌を治してくれず祖父はだんだん腹が立ってきて、また口論になったそうです。
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そこからが大変で、丁度雑貨屋の前にいたのが仇になったのかお互いに物を投げつけるわ、相手を罵るわ、収集がつかなくなり店員さんが止めに入る始末。
そんな店員の制止を物ともせず、祖父は祖母を押し、近くにあったこけしを投げつけた。
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すると、コツンと音がして、こけしが壁にあたり床に落ちコロコロと祖父の足元に戻って来た。
?
不思議に思った祖父は顔を上げるとそこには祖母の姿がなくなっていた。
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そこに居た客も、店員も、何が起きたのかわからなかった。さっきまでそこに居た祖母が、一瞬にして消えたのだ。
ははは、ばかな。どうせ店の中に隠れたんだろ。
そう思い、雑貨屋の中をさがすが祖母はいない。
見ていた人達にも協力してもらい雑貨屋だけでなくデパート全体を探したが見つからなかった。
そこへ、さっきの喧嘩を止めにきた警官が来たので事情を話した。祖父だけがそう言っているならまだしも、何人もの人が目の前から消えたと言ったので警官は信じるしかなかった。
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そこからは、大規模な捜索が始まった。大規模といっても、小さな街だ。原因はわかないがすぐに見つかる、祖父はそう思った。
しかし、結果は見つからなかった。
何日経っても警察から見つかったという連絡どころか、捜索のしようがないと言ってきた。
祖父はそれに対して何も言えなかったそうです。
自分の目の前で突然消えたのだ。人知を超えている。妻はこの世のものでないものに魅入られて何処かに連れ去られたのだ。
そう思った、いやそう思うしか出来なかった。
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?
祖母は、暗闇にいた。いや、突然暗闇になった。さっきまでデパートにいたはずなのに…なぜ?
それよりもここは何なのだろう。
上も下もない。ただ無限に広がる暗闇。
歩こうにも足が空をかくだけで、前に進まない。いくら見渡しても何も見えない。
どうしようもなく、ただ呆然としていると突然、キーンと甲高い音が聞こえてきた。
はじめは小さかったのに、徐々に大きくなっていき、いつしか耐えられなくなり耳を塞ぐがそれでも大きくなっていく。そして
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ギヤアーーギヤグぁぁあああアアアアッアッアッアアッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
ヤメヤメヤメヤメヤメヤメヤメヤメヤメヤメヤメ
こひさたまふにたかさちあかなさはたさなかさたがさがせ、なたかさはなかたあなしかたや
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何人もの人が叫び、吠え、苦しみもがく音に変わった。
祖母は耐え切れなく自分も叫び出した。
一度叫びだすと止まらない。
喉がきれ、口の中に血の味が広がる。それでもやめない、やめれない。狂ったように叫び吠える。
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祖父は、すっかり痩せていた。祖母がいなくなってもう1年が過ぎた。
何もする気が起きず、もう死人のようになってしまった。
自分が悪い。あの時、喧嘩しなければ。あの時、祖母を押したりしなければ。
祖父は、毎日後悔の懺悔をし続けた。
ギィギィギィギィギィギィギィ
祖父が何時ものように、居間でボーっとしているとそんな音が聞こえてきた。
泥棒か…。なんでもいいわ。好きなもん持っていけ。
そう思い気にしなかったそうです。
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ガァァアアアアアアアアッアッア…
?
泥棒がこんな馬鹿みたい奇声を上げるのか…?
ふと、疑問に思った祖父は音に耳を傾けた。
グヒャヒャヒャァー…アアアア…アァ…
どうやら台所から聞こえてくるようだ。
近くになにか武器がないか探すと、灰皿があったので頼りないがそれを持って台所へ向かう。
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ブルルル…ラァラァラァニー
近づくに連れて何やら異臭が漂ってくる。
台所のすぐそばまで来るともはや耐えられないぐらいになった。
ゴフゥ〜〜ー…アアアアッアッアッア…
何の音なのか、まったくわかないが耳を防ぎたくなる。
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入りたくない。
だが、入らなければ。
いつの間にか、身体からいやぁな汗が出てくる。
よし。
意を決して、台所に勢いよく入った。
そこには
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祖母がいた。
いや、正直に言うと祖母かどうかわからなかったらしい。
両腕と両足は腐っているのか黒くドロドロに溶け、顔は正気を保っている顔では無くなってしまっていた、、
すぐに祖父は、救急車を呼び、祖母は病院に運ばれた。
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祖母をみた医者は、絶句。
とりあえず、腐った腕と、足を切り落としあとは、どうしようもないと言う事らしかった。
なんとか三ヶ月は生きられるだろうが、その間正気に戻ることはないだろう、そう医者に、伝えられたそうです。
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それでも祖父は、毎日見舞いに行き祖母の背中を撫で続けたらしい。
そうして、三ヶ月後、祖母は静かに息を引き取ったそうです。
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「それでなぁ、一度だけ正気を取り戻したんじゃ。それでも、ワシのことは最後までわからんかったようだが。どんなところにいたのか、それだけ伝えてきよったわ。んで最後にな
あそこは、死ねない永遠の世界。早く戻りたい。そんなことをいいよったわ」
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今日本には、不自然な消息不明者が数多く存在している。
その人達は、別の世界にいってしまったのかもしれないですね。
ちなみに異次元の扉は、どこにでも存在しているそうです。扉に触れたら最後。もう戻って来れない。戻ってきても…
作者ゼン
文章下手です。