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中編3
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終わらない罪

アメリカ兵リチャード.Dはイラクでの任務を終え、無事祖国に帰還した。

だが、その二日後に彼は消息を断つ。

軍はリチャードを脱走兵と見なしたが、彼の父親は

『息子が脱走するはずがない!!』

と、リチャードを探し始める。

父親は息子が帰国後向かった、ジョージア州フォート・ベニングの基地を訪ねることにした。

兵舎にはリチャードの荷物が全部残されていたという。

それを見て、ますます息子の脱走に対する疑惑の念が強くなっていった。

『私物を全て置いていくなんて……。第一、息子は任務を終えて家に帰るつもりでいたはずだ。そもそも、脱走する必要がない』

両親共に軍人であり、高校卒業と同時に自ら陸軍に入ったリチャード。

イラクから一度だけ、父親に電話してきた事があった

『父さん………

ここから出たいよ……』

普段、滅多に涙を見せないリチャードは電話越しにすすり泣いていた。

…そんな記憶が父親の頭をよぎる。

父親は仲間の兵に失踪当日の話を聞く事にした。

『帰国した次の日の夜、俺達4人とリチャードはストリップバーに行ったんだ。

奴はダンサーに絡んで暴れたもんで店から追い出されちまった。

俺達は奴とは別れて、基地に帰ったんだ。

その後の事は知らないよ』

……リチャードの謎の失踪から4ヶ月程過ぎた頃、ある噂が隊内で流れ始めた。

『リチャードは基地近くの森にいるらしい』

軍が捜索したところ、確かに彼は森で発見された。

身体は火で焼かれ、ほぼ白骨化している。

検死の結果、骨には30ヶ所以上に及ぶ刺し傷があった。

後日、リチャードと最後に出掛けた4人の兵士が逮捕される事となる。

あの日、バーで暴れるリチャードと口論となったマルティネスが突然、ナイフでリチャードの脇腹を刺した。致命傷には至らなかったが、この事が発覚するのを恐れた4人は彼の殺害を決める。

バーガインの証言。

『マルティネスは馬乗りになって、何度も何度もリチャードを刺した。

リチャードは「家族に会いたいんだ」 と叫んでいたが、そのうち「僕は死ぬ…」と小さくうめいて……動かなくなった。

それでもなお、マルティネスは彼をしつこく刺し続けていたんだ』

軍はバーガインの証言をにわかには信じなかったが、当のマルティネスはこれを否定しなかった。

そして、マルティネスともう一人は無期懲役、バーガインは殺人ほう助の罪で懲役20年の判決が下った。

リチャードの父親は、

『息子は奴らのイラクでの民間人に対する残虐行為を知っていた。だから、口外されるのを恐れて、息子を始末したんだ!!』

そう主張し、調査をするよう軍に求めた。

しかし、リチャード自身が負傷した捕虜の傷口に指を突っ込む等の虐待をしていたという証言が出る。

結局、軍はリチャード殺害とイラクでの戦闘に関連性は無いと判断したのだった。

リチャードが死ぬのを傍観していたウッドコフが言う

『俺達は戦場から帰ったばかりだった。

なんでも暴力で解決する場所だからね。

戦争だから………』

戦争を体験した者はPTSD(心的外傷ストレス障害)を発症する割合が多いと言われている。

だからといって「殺人」に至った行為を擁護する事は全くもって認められない。

憲法第9条によって、戦争の放棄を掲げる日本。

一方で、世界で唯一、「核」を落とされた日本。

負けた国のみならず、勝国までにも暗い影をもたらす戦争。

この悲劇を充分に知りながら、繰り返される惨事に私達はどう考えていけばいいのだろう。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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