短編2
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公園の女性

これは私が小学校低学年頃に体験したお話です。

私は小さい頃、転勤族でした。

父と母、兄と私の四人家族です。

私と兄は、‘‘見える’’人間です。

この話は、父の転勤先の東北地方の某県でのお話です。

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その日、私は母と町の公園に遊びに来ていました。

母が公園のベンチに座り、私は自由に遊んでいました。

最初は公園に私と母の二人しか居ないと思ってたんですが、

いつの間にか視界の端に30歳前半くらいの女性がいることに気付きました。

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焦点の合わない目で私を見ていたように思います。

今じゃ人見知りな私ですが、あの頃は誰にでも話しかけていたので、

当然のようにその女性にも話しかけにいきました。

「ねえねえ、おばちゃん何しとるん?」

「………。」

その女性は一言も発さずに私を無表情で見つめていました。

子供ながらにさすがに恐怖を感じ、母のところに戻ろうと踵を返すと、

突然その女性が私の手首を掴みました。

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ギリギリ、と強い力で握りしめてきます。

振り返りたいのですが、怖くて振り返ることも出来ずに、

声にならない声で母を呼び続けました。

次第に爪が食い込み、手首に切り傷が出来てしまい、血が滲んできます。

痛みと恐怖で頭が真っ白になりました。

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「○○ちゃん?」

母が私の名前を呼んだと同時に、手首が離され、体が自由になりました。

恐怖に泣き喚き、母に必死でしがみつきながら、

ゆっくり後ろを振り返ると、もう誰も居ませんでした。

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あとから母に聞いた話ですが、

ベンチから私を見ていたら、突然狂ったように笑い出し、一人で誰もいない空間に話し掛けて、

それからいきなり泣き喚いたので、どうしたのかと思い、声を掛けたそうです。

10年近く経った今でも、あのときの○○は狂気じみてた、と母に言われます。

確かにいきなり狂ったように笑って一人で話して、突然泣き喚いてたのですから、仕方ないと思います。

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そんなことがあった日の夜、家に帰ると兄が顔を顰めて、私をすごく毛嫌いしてました。

今思うと、もしかしたらあの女性が憑いていたのかもしれません。

兄は、あのことがあってすぐに事故で亡くなりました。

私は、あの女性が兄を気に入り、連れていったんだ、と今でも思ってます。

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やはり体験物は重苦しく怖いですね。

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見えると憑かれてしまうこともあるのですね。
お兄様はお気の毒でした。
その霊に連れていかれたのでなく天寿だったと思いたいです。
実話なだけに恐怖を感じました。
これからも色々な体験談をお願いいたしますd(@^∇゚)/

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