子供の入院に付き添った時の話です。
子供の病気の都合で、隣県の大学病院で手術を受けることになりました。
病院って言うとちょっと不気味…、お世話になる身で申し訳ないのですが、個人的にそんなイメージを抱えていました。
ですが、いざ行ってみるとすごく素敵な個室で、とても明るく清潔でした。
手術も無事終わり、術後の経過も順調、気持ちの良い病室で三日目の深夜の出来事です。
ひとつのベッドで子供とふたりで寝ていると、カラカラカラ、と引き戸の開く音がしました。
その時は、三時間毎に様子を見に来てくれている看護婦さんだと思いました。
豆電球ひとつの、暗い室内です。話し掛けて驚かせても悪いと思い、寝たふりを決め込みました。
足音がベッド沿いに聞こえ、そして子供の傍で止まります。子供の体を撫でたり、点滴をいじるような気配が感じられました。
しかし、子供の体調を窺う様子があまりにも長く思えたので(いつもの看護婦さんなら二・三分程度)私は薄目で子供の方を見てみました。
すると、白衣姿の男性が子供の傍に立っています。首から聴診器を下げたドクターです。
医師とは言えど男性なので(この人深夜にノックもしないで入ってきた!)と、少しムッとしましたが、子供の様子を真剣に見てくださっているので(深夜の回診なんて、医師って大変だなぁ)とも感謝しつつ、再び瞼を閉じまた寝たふりをしました。
朝になって、担当の看護婦さんに深夜の話をして(なんて言う先生なんですか?)と聞いたところ(先生は深夜の回診はしませんよー!ママさん寝ぼけてたんですねー!)と笑われてしまったんです。
そんなわけない!いくらなんでも見間違えません。髪型だって覚えていたのですから。
看護婦さんに聞いた瞬間、寝ぼけていなかった分、ヤバいと思いました。
親戚中に必死で子供に付き添う私に付き添ってほしい!などの訳の分からないお願いをしてみるものの、誰も捕まえられず……、そして、次の日の深夜。
多分、同じような時間帯だったと記憶しています。深夜の回診が始まってしまいました。
しかも二度目は足音無し!戸が開いた音も無し!カーテンすり抜けて登場!私の思考は完全に凍り付きました。
でも、なんででしょうか、そんなに恐ろしくはなくて、切ないと言うかなんと言うか。恐らくこの世の方ではないであろう先生、ものすごく真剣に診察してるんです。
見ていて悲しくなりました。うまく説明出来ないのですが…。
暫くして子供の傍を離れ病室からカーテンも戸もすり抜けて出て行った先生を追いかけてみたところ、また別の病室へ入って消えました。
病院側に確かめた訳ではないので真相は謎ですが、死後も医師で在り続ける彼の魂は立派かと…。
ちなみに一年後、再び同じ病院でお世話になった時も(深夜の回診)ありました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話