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これは私が前に、経営していた八百屋で体験した出来事です。
今はあんまり見掛けませんが、少し前まで"迷子になったら すぐおいで"
みたいな言葉と子供の絵が書かれた縦長のポスターを私の店にも貼っていました。
店の戸は四枚のガラス戸で今の自動ドアみたく真ん中の二枚を両側に
手動で開けるようになっており、ポスターは手で開ける部分の
右側のガラス戸に付けていました。
私が八百屋を経営していた商店街は人通りはそこそこだったし、
指定の通学路では無いのであまり役には立ってはいませんでしたが
ある日"コンコン"と音がしたので店の戸を見ると少し背の低い影が見えました。
そこで戸に向かって歩いていって向かって右の戸を開くと、小学生くらいの子が居ました・・・
見たこと無い子でしたが、俯いて少し思い悩んでいる様子だったので
"どうしたの?"と私は声を掛けて、例の迷子のポスター・・・アレを
その子が指差しているのに気付きました。
"迷子なの?"と尋ねると一回"コクン"と頷いたので続いて"どこから来たの?"と
尋ねるとそれはよくわからないようで下に俯いて無反応でした・・・
そこでとりあえず黒電話をとり、交番へ電話をしようとして
名前を聞いていなかった事を思い出し、受話器を置いて再び店先へ向かうと
そこにある気配が増えていました・・・
するとそこに年齢は大体同じの男女が8人程居ました・・・
人数が増えたこともびっくりしましたが、なにより皆が皆同じ姿勢をしている
事に驚きました。つまり皆同じ首の角度で俯いていたんです・・・
一人一人声を掛けようと思いましたがさすがに気味が悪かったので
迷いましたが私は本能的に扉を閉め、金属の棒を鍵穴に差し込んで
固定してしまうような鍵ってお分かりになるでしょうか?
あれを咄嗟に掛けました・・・
すると彼らは最初微動だにしませんでしたが、突然ガラス戸が揺れたり
バンバンと叩かれたりし始めました。
その時はパニックだった気がしますが、すでにガラス戸の向こうに
人影は無く、唯々ガラス戸の叩かれるすさまじい音が響くだけでした。
最初私は店の奥に逃走する事を考えましたが、交番に電話をかけようと
していた事を思い出し、震える手で交番の番号らしきものをかけました。
お巡りさんにはとにかく非常事態である事を伝え、場所を告げるとそのまま
立ち尽くして、助けを待ちました・・・
お巡りさんがどの程度で到着したかはわかりませんが・・・
お巡りさんが着く直前に物音は止んだ気がします。
お巡りさんは一応私の話を聞き、建物内に異常が無い事を確認すると
帰っていきました。私は面倒をかけてすいませんと何度か謝りました。
それから少しして私はあの出来事の原因かもしれない"迷子のポスター"を
剥ぎました。あれ以来少し売っていた駄菓子がなくなったり
店先に気配を感じたりが若干ありましたが、彼らがはっきり現れることは
ありませんでした。
お店の敷地の過去を調べる事もしましたが、何か因縁話のようなものは
全く出て来ませんでした。
恐らく、"迷子のポスター" アレがあの子達を何故か引き寄せてしまったのでしょう・・・
皆さんも"迷子のポスター"を知り合いが使っていたら必ず忠告してあげてください・・・
私みたいに何が起こるかわかりませんから・・・・・・
少し長くなりましたね・・・ スミマセンでした。
作者碧いウサギ