中編3
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ビデオカメラ

私は友人の高嶋とよくドライブに行く。

目的は特にない、

景色が良いところに着いては一休みをしながら雑談。

そして記念に写真を撮る。私達のいつものパターンである。

私も高嶋もドライブが好きで暇があったらとりあえずドライブに行っていた。

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今日も私達二人とも仕事が休みでドライブをすることになった。

高嶋の提案で少し遠目の海辺の方にに向かうことにした。

途中でガソリンを入れながら車を2時間走らせて目的の海が見える高台まで来た。

「ここの景色もいいな!」

高嶋が車を止めながら言った。

「ここらでちょっと休憩するか」

私が提案し、

「そうだな」

と高嶋がひとつ返事し休憩にはいる。

持ってきたコーラを飲む。

車の揺れで少し炭酸が抜けているが、それがまたドライブしてきた感が出て良い。

飲み物を飲みながら雑談をしていると高嶋が

「そういえば俺ビデオカメラ買ったんだけど記念撮影しない?」

と言った。

「いーねー!撮ろう撮ろう」

と私。

「んじゃまず俺が撮るから」

と高嶋が言い、少し距離をとってからビデオカメラを私に向けた。

「おっ!いい感じに取れてるぞ!………ん?」

「どうした高嶋?」

呼びかけたが返事がない。

横を見ると遠くの方から大型トラックが走ってきた。

「おい高嶋!このままじゃ車にひかれるから行ったんビデオをやめてこっちにこい!」

返事がない

「おい高嶋!早くこっち来い!あぶねーぞ!!」

返事がない。

次の瞬間、

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鈍い音と共に高嶋が宙に舞った。

トラックの運転手がすぐに車から飛び出してきた。

トラックの運転手の話によると、道路には私の他に誰も居なかった、と……

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数分後救急車と警察が駆けつけ、高嶋は救急車に、

私とトラック運転手は警察にいろいろ事情を聞かれた。

私は30分くらいで解放されたがトラック運転手は警察に連れられて行った。

警察の方に自宅まで送ろうか?

と言われたが私は断って高嶋の車で帰った。

決して高くはない車だが、高嶋はとても大事に乗っていて、その車に他人を乗せたくはなかった。

高嶋のアパートの駐車場に車を止めて、そこから歩いて家に向かった。

その右手にビデオカメラを持って…

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何故あの時私の声が高嶋に届かなかったのか。

何故トラック運転手は高嶋が見えなかったのか。

そして高嶋が持っていたビデオカメラが何故無事なのか。

これらの疑問をすべて解決するとは思わないが、あの時何がカメラに映っていたのかが気になり、気がつくと私はビデオカメラを持っていた。

家に着くなり私はビデオカメラに残っている唯一のデータを再生した。

最初地面が映っていたが、数秒後に私が映った。

「おっ!いい感じに取れてるぞ!………ん?」

高嶋の声が流れた途端目から涙が流れた。

が、

それもつかの間、

なんと後ろの崖下から白い女性らしきものが登ってきた。

人が簡単に登れるような崖ではなかったはずだ。

這いずりながら私にせまっている。近くに海があるからなのか、異様に服が濡れている。

私の足もとまで来ると、私の体を掴みながらフラフラと立ち上がり始めた。

立ち上がると今度はなんと私の首を締めるような感じで、

私の首もとに手を近づけてきた。

私はパニックになっていたが次の瞬間、

とても大きい音がビデオカメラから響き、驚いてビデオカメラを放り投げてしまった。

なんなんだあいつは⁉︎

とても冷静にあいつを分析できる状態ではなく、ただただ床に転がっているビデオカメラを見ているしかなかった。

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…30分程たった。

ようやく我に返った私はビデオカメラを持って車を走らせた。

一人でこの事実を抱えているのが怖くなったのだ。

頭にすぐ浮かんだのが警察。

警察にこのビデオを見せたところで高嶋が戻ってくるわけでもないが、見せずにはいられなかった。

車を走らせている時、ふとミラー越しに後ろを見ると、なんとあいつがいた。

その瞬間首に強い痛みとともに意識が薄れていった……

Concrete
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道路に誰もいないなら何故トラック運転手は車を止めて、すぐに車からおりて来たのでしょう?怖さを感じました。

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