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気付いた時が恐怖の始まり

中編5
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気付いた時が恐怖の始まり

どーも!!

この話は、トリハダっていう本から。

パクったやつです。

どうやら幽霊の出ない怖い話らしいです。

music:1

残業が多いから、どうしてもこの時間になっちゃうな。

深夜のコインランドリー。青白い蛍光灯の下で吉沢沙織は、そう溜め息をついた。

乾燥機からでる生暖かい空気が狭いコインランドリーに充満し、単調な運転音を聞いていると眠気が襲ってきてつい、うとうとしてしまう。独り暮らしが多い都会でも、こんな時間に洗濯しているのは自分くらいだろうなぁ。

沙織はグルグルと回ってる乾燥機を眺めながらあくびをした。

コインランドリーには沙織だけだ。他には誰もいない。時折、外の道を車が通りすぎる。

深夜に若い女性が一人、コインランドリーでうたた寝をしているというのは、いかにも不用心だ。かといって、下着を乾燥機に入れっぱなしてで離れたくはない。

眠気をさまそうとして沙織はタバコを取りだし、百円ライターで火をつける。

週刊誌かマンガ本でもないかしら。

何気なく周囲を見回すと、洗剤の自動販売機の上にテレビがあるのに気がついた。古いブラウン管タイプ。余り大きくない。

何か映っている。テレビドラマだろうか。どうも違うようだ。

画面の右下には現在の時刻が出ている。午後三時過ぎだ。真ん中に各地の明日の天気。宇都宮は雨らしい。

右上にはライブの文字があってお台場と書いてあった。インターネットの観光案内などによくあるライブカメラのようだ。

ふーん、こんなのがあるんだ、深夜の放送って

タバコを吹かしながら沙織はぼんやりと映像を観ていた。リアルタイムのお台場が映されていて、そのほとんどは真っ暗なのだ。

music:3

だが、もじがない右下の隅に何か動いている。

なんだろう。誰かいるみたい。

画像は荒く鮮明てはない。だか、どうやら人がいるらしい。沙織は思わず身を乗り出していた。

「やだ、喧嘩?」

沙織は呟いた。

右下の人影は二つ。激しく格闘しているように見える。

沙織は不鮮明な画像をよく見ようと立ち上がり、タバコをてにしたまま、テレビに近づいた。

確かに、二人の人間が争ってる。

一方が一方をビニール傘のようなもので殴り付けていた。

ヤバイ感じ。

ライブカメラに喧嘩が映し出されているのだ。

いや、喧嘩というより、もっと殺伐としたもの、凶悪な暴力のようなものを沙織は感じた。ほとんど一つのシルエットのようになって争う二つの影。ブラウン管の荒い画像が、その凶悪な行為を強調していた。

とうとう一方がナグリ倒された。荒い画像には、倒れた人間に傘の先を乱暴に突き立てる男の様子が写し出されている。

そんなことしたら死んじゃうよ。

沙織は呆然と画面を見つめ、半信半疑ながら顔を歪めた。男は倒れた人間に何度も何度も憎悪をたぎらせたように傘を突き立て、最後には馬乗りになってとどめを刺すような仕草をしている。

マジ、やばすぎ。

倒れた人間は、ついに大の字になって地面に横たわる。ピクリともしない。その体には傘が突き刺さっていた。

馬乗りになっていた男は、そこから飛び退いて尻餅をついている。興奮状態なのか、やってしまったことに驚愕しているのか、とにかく肩で息をしているようだ。

眠気などとうに吹き飛んでいた沙織の頭の中では、その画像についての思考が目まぐるしく交錯していた。

深夜の実験的な何かのドラマかもしれない。いや、ライブカメラなのだから、そんな手の込んだフィクションは作らないだろう。どこからどっきりカメラの看板でも出てこないかしら。いや、そんなものはない。

これは実際にお台場でおきているライブな事実なのだ。沙織の手にしたタバコが燃え尽き、指先を熱くしている。

ライブカメラに映し出され、起きていることを頭の中で生理する間、沙織は棒のようにただテレビの前に突っ立っていた。

突然、その思考を中断させるかのように、乾燥機のタイマーが終了のアラートをならす。その電子音にビクリと体を震わせ、我に返った沙織は、テレビの画面から視線を外す。

「警察.....」

ほぼ反射的に警察へ通報するべきだと判断し、沙織はタバコを灰皿に押し付けて携帯に手を伸ばす。

1.1.0とボタンを押した瞬間だった。沙織の携帯に非通知の着信があったのは。何度も着信音が鳴る。

誰から?こんな時間に。非通知だし。警察に電話できないじゃない。

出ようか?どうする?

「もしもし...」

憑かれたように沙織は電話に出た。

携帯からは低い男の声がする。

声が小さすぎてなかなか聞き取れない。

「見ただろ。」

「えっ?」

こいつ誰?何、言ってるの?

「いま、見ただろ」

繰り返すように、男が言った。

どういうこと?まさか......

「お前、今、見てただろ?」

見てた?ライブカメラ?嘘でしょ?

動揺する沙織を脅かすように、外をエンジン音を響かせてバイクが疾走する。信じたくない。嫌な想像を振り払いたい。沙織は恐る恐る振り替えって背後のテレビをみた。

思わず携帯を落としそうになる。

ライブカメラの画面には、黒々としたシルエットの男が写っていた。こちらを向いたらその影は明らかに携帯電話を手にして電話をかけていた。

そして、その相手は沙織なのだ。

怖くなって慌てて電話を切った。

なんなの....??イタズラ??

沙織は恐ろしくなり下着を乾燥機から取りだし早足で帰った。

帰る途中、いつ襲われるのか不安だったが、大丈夫だった。

なんだ、やっぱりイタズラだったのか。

music:2

そう思ってドアに手を掛けたとき、閉めたはずの鍵が空いていた。

嘘でしょ??

沙織は恐る恐るリビングに行った。膝はとても震えてた。

男はいなかった。

はぁー、やっぱ居なかった。って、あたし何やってるんだろう。

我に返った沙織は夜食を食べようと後ろを向いた。

その時、後ろに男が居た。

男は傘を持って沙織に突き立てた。

男はニヤニヤしていた。

「ごめんなさい。」

その言葉が沙織の最後の言葉だった。

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