妬み、というものが、平凡の中にこそあると思い知らされたのは、中学の時だった。
顔もスタイルも成績もスポーツも、何ひとつ突出したものがなく、かといって、烙印を押されるほどひどくもない。
いわゆる「普通」
それが、わたしだ。
中学二年の時、A子と同じクラスになった。
差がないからこそ、何かで差をつけたかったのだろうと、数年たった今では思うが、当時はなにかとつけて張り合うA子がうとましく、うとましく思う自分がまた、大人になったような気がしていた。
ある日、A子が学校に指輪をしてきた。
紅い石のはまった指輪は、中学生の目から見ても高級そうに見え、その時だけは、A子はクラスの中心にいた。
あの時の得意そうな目が、今でも忘れられない。
その日、家に帰ると、飼い猫がいなくなっていた。母親が外に出すのを嫌がるので、まったくの家猫として育てていたのに、忽然と姿を消していたのだ。
翌日、泣きはらした目のわたしを迎えたのは、クラスメイトの冷たい視線だった。
知らないうちに、A子の指輪を盗んだ犯人にされていたのだ。
A子が証言するところによると、放課後、わたしがA子から無理矢理、指輪を奪っていったのだという。
そんなバカな!
昨日は、いなくなった猫を必死に探していたのだ。
わたしの言葉は、クラスの半分に信じられ、残り半分はA子についた。
こういう時でさえ、わたしたちは、平均的なのだ。
中学を卒業してから、A子のことなど思い出しもしなかったのだが、昨日、母が庭から不思議なものを見つけた。
植えかえのため掘り起こした、椿の潅木の根本から、小さな動物の骨が出てきたのだ。
色あせた紅い首輪のせいで、昔、飼っていた猫と知れた。
わずかに残った骨の内、腹と思われる部位に、土にまみれた紅い石の指輪が、一つ、あった。
作者maki-s