これは祖父が若い頃に体験した話です。
祖父は昔、E県に出張していました。仕事が終わり同僚のHさんと一緒に旅館に宿泊した。
その宿で2人は夜遅くまで他愛もない話をお酒を飲みながらしていた。
深夜の2時頃にベランダで将棋を始め、暫く続けていると祖父はある異変に気付いた。
それは、ベランダのすぐ横の庭園で白い猫が2匹、小石や酒蓋を並べて将棋をやっているのです。
祖父は何かの見間違いかと思い凝視したら、間違いなく2匹の猫が将棋を打っている。
Hさんが次の一手を打つように急かしているが、祖父は近くで確認しようとベランダから身を乗り出した。
がしかし、Hさんが『なにやってるんだよ』と言い祖父を止めそのまま部屋に戻された。
その騒ぎに気付いた猫達は逃げてしまった。
祖父はHさんにその事を説明したが、ただ酔っぱらっているだけだと思われ信じてもらえなかった。
その後、酔いを覚まそうとラウンジで卓球をすることになった。
暫く打ち合っていると、4、5人の小学生ぐらいの子供が廊下から走りながら近づいてきた。
子供達は皆服も着ず裸だった。これから温泉にでも入るのかと思い卓球を続けようとしたら何故か子供達は祖父の方へ来た、そしてよく見るとその中の一人がさっき庭園で見かけた猫を脇に抱えていた、そしてそのまま子供達は祖父とHさんを素通りし外へ出て行ってしまった。
祖父は疑問に思い『子供がこんな時間にどこ行くんだろうな?』と言うと、Hさんは『子供なんて居なかったぞ』と言ったそうです。
その2日後、祖父は出張が終わり東京へ戻り自宅で一人でくつのぎながらテレビを見ていた。
チャンネルを変えていると不思議な番組がやっていた。
不気味な老婆がドロドロに汚れた白装束を着て走っている。
「ホラー映画か?」と思った叔父はそのままその番組を見ていて、ある事に気付いた。
背景にHさんと宿泊したあの旅館が一瞬映ったのだ。
「ロケ地はあの旅館か」そう思って暫く見ていると、ずっと老婆が雑木林や砂利道や原っぱを走っている映像ばかりが流れていて番組の内容がよくわからなかった。
「なんだこりゃ?映画じゃなくて前衛芸術とか実験映画とかいう奴だろうか?」そう思いなが
ら新聞のテレビ番組欄を見てもそれらしき番組の放送予定は無く…
「バラエティ番組って訳でも無さそうだし、放送事故か?」
叔父はこの不思議な番組の正体をあれこれ色々と考えていたが、気付いたら眠ってしまっていた。
起きた時には窓の外は既に真っ暗で、テレビはつけぱなしだった。
例の番組はまだ続いており時計を見ると午前3時を回っていた。
「おいおい、嘘だろ?長すぎじゃないかこの番組」驚いたが気になりそのまま暫く見ていた。
そして、老婆が走り続けている映像に映る背景は叔父の住んでいる街だと気付いた。
しかもよく見ると老婆の手にはいつの間にか包丁が握られていた。
「馬鹿な!?ここに近づいて来てるのか!」叔父は少し怖くなってテレビを消した。
すると『ブウ-ン』という音と共に、消したはずのテレビが勝手に点いた。
叔父は恐怖を感じテレビの電源ケーブルをコンセントから抜き、部屋中のドアや窓の鍵を閉めてベットに潜り込んだ。
ベットの中から恐る恐るテレビを覗くと、そこには老婆はもう映っていなかったが、旅館で見た黒子供達が叔父の家のドアを内側から力いっぱい手で押している映像が映っていた。
「きっとドアを壊して老婆を部屋の中に入れようとしているんだ!どうしよう!?」
叔父は何も出来ずにベットの中で震えていた。
すると画面が突然切り替わって包丁を持った老婆が階段を上って来ている映像が写った。
「やばい!家のマンションじゃないか!」ベットの中で震えている叔父は腰が抜けて一歩も動けなかったそう。
とうとう叔父部屋ドアの前で老婆が立ち止まりました そして…
コンコン…
テレビからでは無く実際に祖父の家の玄関からドアをノックする音が聞こえて来た。
この時叔父はショックで失禁してしまった。
が、次の瞬間
「夜分失礼します!叔父さんですか?お久しぶりですF子です!叔父さん開けてくれますか?大事なお話があるんですが…」
F子さんというのは叔父の大学時代の元恋人である。
叔父はF子の声を聞いてベッドから出ようとしたが、テレビをもう一度見ると物凄い勢いで包丁
の柄でドアをガンガンやたらめったら叩きまくっている狂った老婆の姿が映されていた。
コンコン
「叔父さん?本当に夜分にごめんなさい!大事な用なんです!」
F子の優しい声とノックの音は現実に聞こえるが、テレビのスピーカーから流れる老婆の凶悪
な破壊音は現実には聞こえない。
何だこれは!?F子が助けに来てくれたのか?F子に霊感なんてあったのか!?混乱してそんな
事を思っていた叔父はF子に助けを求めようとベットから出る。
するとまたテレビの画面が切り替わり子供達が映り込む。
子供達の一人が手に何かを持って玄関の壁に文字を書き出した、叔父はテレビ画面を凝視する。
「えふこはにせものでたらころされるよ」
ひいっと叫び尻餅を付いた叔父。
コンコンコンコン
「どうしたんですか?叔父さん開けて!おねがいします!」精神が限界に達した叔父はベット
に戻りそのまま朝まで震えていた。
朝6時頃、ベットから顔を出すとテレビは普通に戻っていた。
ドアの方は恐怖で見る事が出来なかった為大家さんを携帯で呼びドアの周囲を確認して貰った。
すると…
「あらやだ!酷い!なあにこれ!泥棒じゃ無いわよね?暴走族でもイタズラだれたのかしら?
ドアがベッコベコじゃない?何があったの?」と言うので恐る恐る見に行くと、ドアが凄いことになっていた。
ドリルで付けられた様な穴が無数に空いており、ドアの中心部はグシャグシャに凹んでいた。
どうしてここまで破壊されていながら中に侵入されなかったのか不思議だと大家さんは言った
そうだ。
あの子供達が守ってくれたんだろうか?
その日、叔父はF子さんに確認の電話を入れたんだけど当時の大学時代の固定電話番号は
もう使ってないみたいで音信不通なので確認不能。
叔父はすぐに自分の荷物を全部放っぽって引っ越した。
その後は不思議な猫にも子供にも老婆にも出会って無いそうです。
「あれは何だったんだろう?」と叔父は言っているけどホントなんなんだろう?地霊か何か?
作者さらだ-2
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