これは大学のときの話です。
Aは、写真部に所属しており、年に一回写真の大きな展示会があるのですが、そこである有名なフォトジャーナリストBさんと話が弾み、連絡先を交換しました。
私は写真部ではないのですが、Aの紹介で後日私もBさんとお話をさせていただきました。
Bさんは世界を周り、ある時はアフリカで貧しい子供たちの現状を、ある時は中東で戦争の惨さを、ある時は南米の秘境の絶景をカメラにおさめてきました。
旅が大好きな私はBさんの話がとても魅力的に感じ、Bさん自身も男として憧れる格好良さでした。
Bさんはとにかく大きな声で、活気の塊みたいな人でした。
nextpage
ある日、Bさんと意気投合したAと私は、Bさんに蛍と月光に反応して花が咲く植物(名前は忘れました)を撮りにいくから来ないか?と誘われました。
当然行きたい!と返事をしましたが、当日体調が優れなく、翌朝に大事な用事があったため、BさんとAの2人で蛍と花を撮りにある森へ行くことになりました。
後はAに聞いた話です。
nextpage
AとBさんは車の中で、大きな声で歌いながら、にぎやかに森へ行く道中をとても楽しんでいたそうです。
車で5時間かかるというかなりの遠出でした。
快晴でとても日が照りつける午後3時、途中眺めのよい崖の上にある駐車場に車を停めたそうです。
Bさん「かなり見渡しいいから、ここで写真撮っていい?」
そこでBさんは広大な崖と下に広がる自然を無我夢中でカメラにおさめていたそうです。
nextpage
そのとき、Aは遠くの崖の上に、赤いものを見つけました。
A「あれなんですかね?赤いやつです。」
Bさん「どれ?うわ。女の人だよ。赤のワンピース着ている。」
カメラの望遠で見ながら、それから数十秒赤い方にカメラを向けていました。
A「Bさん何してるんですか!止めに行きましょうよ!」
Bさん「この距離どう考えても間に合わないだろ。」
nextpage
次の瞬間、赤いものが崖から落ちたそうです。
パシャパシャパシャパシャ!
隣からシャッター音が。。。
A「なにやってるんですか!」
Bさん「こんな瞬間なかなかとれないだろ。大丈夫、心霊スポットで霊的なものは撮ってきたけど、何ともなかったからねー。」
結局、その後何事もなく、目的地である森へ行き、とても綺麗な蛍と花が月光に照らされて咲く瞬間をカメラに収めていたそうです。
nextpage
数日後、Bさんはカメラを辞めました。
AはBさんと先日お会いしたんですが、
活き活きしていた姿から打って変わり、かなり痩せ細っていたそうです。
とてもカメラを大切にし、写真を愛していたのに。
辞めたきっかけは、崖で撮影した写真だそうです。
崖で連写した写真に、
真っ逆さまに落ちている赤い女の人が6枚写っていたそうなんですが、
4枚目の写真だけ、笑顔でカメラ目線だったそうです。
作者石
信じ難いですが、実話です。