つい先日、同僚の送別会の帰り、駅で電車を待っていた時の事。
もうじき来る普通電車を見送り、後の特急に乗ろう・・・と考えながら、ぼんやりホームのベンチに座って電車を待っていた。
平日の夜遅い時間だからなのか、電車を待っている乗客は少なかった。
そして間もなく普通電車がホームに。
降りる人、乗り込む人・・。
ひととおり乗り降りが終わり、車掌が最後尾の小窓から顔を出して、発車の合図でドアが閉まり・・・・・・・???
閉まらない?
車掌が発車の合図をしない。
と、いきなり、
「乗りますか!!」
車掌が声を張り上げた。
声に驚き、顔を車掌の方に向ける。
すると、車掌は再び、誰もいないホームに向かって、
「後ろに下がって下さい!」
・・・・・???
ホームにいる乗客は
皆、空いているベンチに座っていて立っている人は誰もいない。
その乗客達も、私も、
無人のホームに叫ぶ車掌を何事か?と見ていた。
また一声、
「危ないから下がって・く・だ・・!?」
明らかに狼狽している車掌。
慌てふためき小窓から顔を引っ込めた。と、同時にドアが勢いよく閉まり、
電車は、ホームを逃げる様に出て行った。
・・・・。
私を含め、一部始終を見ていたホームの乗客の何人かは、誰からともなく、改札へ降りる階段へ向かい始めた。
「今日はタクシーで帰ろう」そう思い、私も階段へ向かった。
列車に乗らずに旅立ってしまった魂は、
乗りたくても、もう乗れない。
タクシーの中でそんな事を考えていた。
怖い話投稿:ホラーテラー タマさん
作者怖話