子供の頃、十年あまりに渡り、実の兄から酷い虐待を受けた。昼は目さえ合えば暴力、夜は性的虐待。
本当に生き地獄だった。
母は暴力は知っていた。
性的虐待については、母に告白するのに何年もかかった。
ようやく、母に告白した時、母は一言……“父さんには黙ってなさい”
それっきり助けてもくれなかった。あの時、母に生きながら殺されたのだ。
毎日が絶望しかなかった。
私は故郷を捨てた、生きるために。
まだ十六だった私は、生きるために水商売に、年をごまかし働いた。
有名なクラブだったが、なによりオーナーが、暴力団の会長だったからだ。そこなら、私は商品だから、兄の手から逃げられると思ったのだ。
何年かたち、チーママまでになっていたある日、ひどい高熱で、店をやすんだ。
熱でうかされていると、ベランダに白装束を着た女性がみえた。
チリーン、チリーンと鈴の音がし、私に近づき、私の手を優しく握った。
母の手だった。
どんなに恨んだかわからない、けれど恋しい母の手だった。
私は、その手にほほずりし涙が止まらなかった。
“ごめんね………”
母の声が聞こえた
そして、消えていった。
母が消えると、不思議と熱は下がっていた。
“私、まだ生きててもいいんだよね?母さん”
泣きながら叫び、微笑む母をみたような気がした。
今も、頑張ってなんとか生きてます。母の手をささえに
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話