今朝の、占い。
(『今日のアナタは落とし物に注意! うっかり大切な物や身に付けてる何かを失くしちゃうかも?』)
少し焦げ気味のトーストを噛りつつ、しばし静止。
(『気を付けて行ってらっしゃーい!』)
「……」
……あ、もう行かなきゃだ。
取り敢えず普通に家を出て、別に特に急ぐ訳でもなく自転車を走らせ、駅へ向かう。陽しが少し辛い。
プラットホーム。
一番前。だから、
(『きょうのあなたは』)
もしも何か落としても、
後ろの誰かが気づいてくれる……かも? とか。
人は、うんざりな程溢れてる。
「……っつ」
気持ち悪い温度が嫌で不器用に青い空を睨む。
音楽。
アナウンス。
……電車。そうして、
そうしてほんの一瞬だけ、私はぼうっとした。
nextpage
どんっ
shake
nextpage
わざと、ではないその力加減。
けれど体が前に行ってしまったのを戻す術を、
まだ十七になったばかりの私は知らない。
皆、気づく。誰も誰かも彼も彼女も。
けれどその落とし物を拾うのはあまりにも億劫で
振動。小さく切れた両膝。鈍い痛み。
私は動かない。
人々は動けない。
(『今日のあなたは……』)
うっかりとかいう度合いじゃないだろうと思うんだけれど、そんな文句は言葉になる前に熱い鉄の音と匂いによって裂き消された。
……さて、さて。
こうして、私は占いどおり落とし物をしたのである。青い服のおじさん達は、微妙な顔をしつつも、それはそれは丁寧にだいたいの所は見つけてくれたのだが。
それでもまだ足りてない。この際細かいものはいい。大まかに拾ってくれたらそれでいいのにな。
あ、そうだ、そこのあなた。
もしも暇なら、一緒に捜してもらえませんか?
nextpage
wallpaper:987
私の頭と左足。
作者麻野あすか
リアルJK時に文芸部のホラー特集か何かで提出した短編です。
まだよく使い方わかってないのでそのうち音とか絵とか足したい!