心霊スポットに遊び半分で行ってはならない…とはよく聞く。
が、霊感が残念なくらい無い私達にとって、そんな言葉は全く以て意味を成さない。
大学生になってもまだ、あちこちのスポットを彷徨い続けていた。車の免許を手にした事で行動範囲も拡がったから尚更だ。
その日はいつものメンバーに加えて、Uちゃんが彼氏を連れてきたので計6人でゴルフの打ちっぱなし?跡地に出掛けた。
おそらくバブル期に建てられたものだろうが、元々人口もそんなに多くない田舎町。廃れるのも早かったのかもしれない。
打ちっぱなしをする建物は壊れて見る影もなかったが、隣接している事務所?らしき小さい建物は窓ガラスがぐちゃぐちゃに割られているくらいで、案外マトモに残っていた。
二人ずつペアになって入るのをルールとし、ジャンケンで決めた為に私はUちゃんの彼とペアになってしまった。さすがに遠慮したが、Uちゃんに「いいから、そんなの気にしないで!」
と背中を押され、各三組は中に足を踏み入れた。
事務所の外観から想像するより中は広い感じがした。部屋のつくりからして事務所というより、客人が寛ぐ簡易施設のようだ。
1Fから順に回ったが、早速ペアのK君が何かを見つけた。
新聞だ。テーブルの上にぽつんと置いてある。私は懐中電灯を近づけ何気に新聞の日付を見た。
…………!?!
「昭和〇年〇月〇日」
私達の生まれた年だ。
単なる偶然に決まっているが、それにしても気味が悪かった。偶然でも怖いものは怖い。
…ってことはバブルより前からあるのかな? 20年近くも前の新聞がまだそのまま置きっぱなんて…やっぱり怖いよ…。
K君は私よりびびっているみたい。それには理由があった。
「オレ、昔から時々感じるんだ……」
「えっ? 何を??」
「わかんないんだけど、自宅でも変な音聞いたり、気配感じる事あるんだよ…」
私は笑いながら
「ちょっと〜脅かしてるつもり!?」
とあしらったが、K君の顔は真剣だった。ふざけて私をからかっているのではないと感じた。
2Fから3Fに上がる階段にコロリと小さな子供の靴が一足だけ転がっているのを見つける。
「誰かがワザと置いてったっぽいね…しょうもなぁ」内心、ちょっとゾクッとしてしまったが私は平静を装った。K君は固まっていた。
3Fのフロアは小部屋がいくつか並んでいて、ドアは破られて中はまる見え。
すっかり大人しくなってしまったK君を連れて部屋に入った。
シャワールームがおどろおどろしい。ただの錆だと思うが(それ以外は考えられない)、ノズルから赤黒いものがズルズルと伸びていた。
それらを見て、私だって全然怖くないわけじゃない。でもその時はK君の様子が気になって、必要以上に明るく振る舞っていたのだ。
一通り覗いた所で私とK君は1Fに下りた。
館内からはキャーキャー叫び声とギャハハハという笑い声がこだましていた。
K君の表情はますます暗くなっていった気がする。
6人皆、駐車場に集まり、例の新聞に話題が集中した
「あれ、マジびびった!!」
「いや〜偶然とはいえね〜なんかヤだよ……」
「あの新聞の記事、何書いてあるか見た!?」
「見てない。…てか暗いしそこまで気ィ回らなかったよ」「確かに。でもビミョ〜に気になる…」
散々感想を述べ合ったが、結局、記事の内容を確かめに行く事はしなかった。
一人具合悪そうなK君を皆心配していたのだろう。
車に乗り込み家路についた。
それから一週間程してUちゃんから連絡があった。
話を聞いて欲しいという。なんとなく嫌な予感がしたが私の予想は珍しく当たっていた。
K君が電話に出ないらしい。メールの返事も来ない。夜アパートを訪ねても電気が消えていて居る気配が無いという。
ケンカした覚えはないし、来月には旅行も計画していたとUちゃんは半泣き状態だった。
女も気まぐれだけど男も気まぐれだよ…ただ数日友達の家にでも泊まってるんじゃ?…そう、Uちゃんを励ましたけど、彼女は納得しない。
彼女の頼みで、K君のアパートまでついて行く事にした。部屋の前で様子を伺ってみたが、それじゃ解らない。Uちゃんがドアノブに手をかけると扉が開いた。彼女はそのまま中へ。
私は外で待っていた。
「Nちゃん、一緒にきて…」Uちゃんに呼ばれ私も中に入る。玄関も部屋の中も整理整頓されて凄く綺麗
「K君超几帳面なんだ…」
留守中にお邪魔はよくないから出ようと言おうとした瞬間、Uちゃんが「やだぁ!!」と声をあげた。
K君のベッドの上に大量の髪が落ちていた。若者の抜け毛にしては多過ぎる。それにゴボッと束になって固まっている感じがした。数日で溜まる量ではない。まして几帳面な彼なら掃除するはずだ。
これと彼が連絡を絶った理由とが関係あるかは判らない。でもメールくらいできるんじゃ……。
いろんな謎が残りつつも私達は部屋を後にした。
K君から連絡はやっぱりこない…Uちゃんは落ち込みを通り越して諦めていたように思う。
私も深く首を突っ込むのは気が引けて何も出来なかった。
あの日の帰り際に見た、K君の浮かない表情だけがただ思い出される…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話