中編3
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自殺スポットの橋

とある夏の日、少しの間夏季休暇をもらった私は1人で趣味の温泉巡りをしていた。

そして宵の口に入り運転にも疲れたところで休憩がてらたまたま見つけた饂飩屋に入った、山芋の入ったざる饂飩を注文し出来上がるまで暫くかかるとの事なので待っていると饂飩屋の主人が突然奇妙な話をし始めた

「お客さん、余所から来たみたいだしこの辺の事はあんまり分からないでしょ、もしこの辺で大きい橋に迷い込んだら気をつけてね、あそこは...」

その時饂飩が出来上がったようで店主は話を止めてしまった、気味は悪かったが空腹にはかえられず私は饂飩をスルッと完食すると直ぐに勘定をして店を出た

そして家路に着こうと車のエンジンをかけカーナビの目的地に自宅周辺を設定して走り出す...がナビの示す道をずっと走っているとどんどんどんどん暗い道へ入っていく

当初は(渋滞迂回する近道か?最近のナビは賢いなあ)と暢気に思っていたが

チラッと方角を見ると自宅とは逆方向だ、ここで先程の店主の話を思い出し(まさか...)と思い最後までナビの指示に従ってみる事にした。

行きたくない、そっちじゃない、やめろ...と思いながらもハンドルを握る手は勝手に動き、引き寄せられるようにある一点を目指し走っていく

「目的地周辺です」

そうして暫く走っているとどうやら着いたようである

だが其処は目的地に設定した筈の自宅周辺ではなくあの店主の言っていた大きな橋だった...

そしてなぜか私は車から降りて橋の上を歩いていき下の川を覗き込んだ、すると

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙

言葉になっていない叫び声のようなものと無数の手が此方に手招きをしているように見えた。

パニック状態になった私は逃げるように車に戻りキーを回すがエンジンがかからない、車の外を見ると無数の手が迫ってきているのが見える、そしてもうダメか...と思ったその時...

かかった!

逃げるようにアクセルを強く踏み先程の饂飩屋まで戻ると店主が出迎えてくれた

「おう兄ちゃん、その顔は...あー見たか...」

ちゃんとした人間がいた安心感からか泣きじゃくる私を優しい顔で介抱してくれながら店主は話し始める。

「彼処はな...昔から自殺が多くてなあ、今はフェンスを高くしたり優しい色にしたりして対策を施してんだけど...それでも飛ぶやつが後を絶たないんだよ。」

この辺に自殺の名所の橋があるとは聞いていたが私がさっきまでいたあの場所が正にそれだったのである。

「それで...最近は遺書も残さず、自殺するような理由がない幸せそうなヤツが飛んだりしてんだ...まあ非科学的な話だけどそれこそ何かに引き寄せらるようになあ...兄ちゃんみたいな人間は特に引き寄せられやすいかもなあ...」

この店主はどうやら私の体質を見抜いているようだ。

だとしたら私もあの橋で亡くなった自殺者達に引き寄せられたのかも知れない、或いは引き寄せられた者達が道連れにしようと...

「まあ無事でよかった、うちは泊めてやれんけど今日はどこか泊まって明るくなってから帰んな」

店主にお礼を言いビジネスホテルに入って怖かったので明かりをつけたままで寝た、翌朝チェックアウトして車に乗ろうと鍵を開けドアに手をかけた時....

フロントガラス、リアガラス、窓ガラス、ピラー...至る所に人間のものとしか思えない手形がついていた。

また気味が悪くなり給油がてらガソリンスタンドで洗車して貰い手形は消えたが

帰り道に1人の筈なのに誰か乗っているような感覚があった、一応塩を撒いたが薄気味悪いまま暫く乗っていた

その車は後日、あの橋とは全く関係のない橋の上で突然サスペンションが壊れ真っ直ぐ走れなくなり廃車になってしまった。

幸いスピードも出ておらず怪我は軽傷だったがもしあの時、一歩謝り川に落ちていたら...

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