男は先ほど友人が言っていた事を思い出す。
「知ってるか? そこの公園でタバコをポイ捨てする奴が一人も居ないんだって」
友人は思わせぶりな態度で話を始め、途中で用事を思い出して帰ってしまった。オチを聞きそびれた男は件の公園でベンチに座りタバコを吸った。すぐに拾えばいい。そう思って指の先から地面に落とした。
男はそれを視界の端に見る。
初めはボロ布だと思った。すぐにその布の端からカマドウマのように変形した人間の手足が生えていることに気づく。布がはためくと弛み太った白い胴体が覗き、全身が胆汁のような悪臭を放つ粘着質の液体に塗れているのが分かった。
「ステタ、ステタ、」
それは黒板を掻くような不快音をたて男の方に這い寄ってくる。男は倒れこむようにして落ちたタバコを掴んだ。
顔を上げると、もうそこにはなにも居ない。
ベンチの隣には灰皿が設置してあった。男は震える手でタバコを捨て、足早にその場を立ち去った。
作者微笑み椅子
この物語はフィクションです、
#gp2015