長編8
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森川公園

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これは私自信が、初めて霊というものの存在を認識しなければいけない、きっかけとなってしまった出来事です。

もう7年も前の大学生の頃の話になりますが、私は東京の某大学のサークルで、怖いDVDや全国各地の心霊スポットを調べる的なサークルに所属していました。ただ、そこに行く等といったことは無く他には飲みに行くだけの平凡なサークルです。このサークルに所属したことで、恐怖体験をしたなどといった事はありません。

ただ、サークルのおかげで少しは全国的な心霊スポットなど詳しくなりました。私的には心霊というよりも、そこにまつわる歴史的なことの方が興味がありました。

サークルには、私(男)の他に3人の仲の良いメンバーがいました。H(男)、A(女)、B(女)です。みんな地方から進学してきたメンバーです。

大学3年の夏休みを利用し、私たちはこの4人で、三泊四日の沖縄旅行に行くことになりました。

ただの観光です。心霊スポットにいく予定など全くなく本当にただの思い出旅行になるはずでした。

出来事は、2日目の夜に起こりました。

私たちは、宜野湾市というところにあるホテルに泊まっていてその日は近くの居酒屋で夜を過ごしていました。

夜中2時ごろにホテルに戻ろうと居酒屋を出たのですが、Aが

「【森川公園】にいってみたい」

と言い出しました。

【森川公園】、サークル関係で少しは知っていましたが

沖縄では有名な天女がいた松の木があるという羽衣伝説が残っている事や、国指定史跡にもなっている史跡が残っている神秘的な場所。

その裏では、戦争犠牲者の霊が多く残る場所、沖縄特有の霊能者【ユタ】の修行場所として知られ、森の奥には赤い看板があり『この先の命の保証はありません』と書いてある、他にも霊に関する数々の噂が立っている場所でした。

私も興味はありましたが、夜だし(2時だし)神秘的なものに興味のある私は昼間に行くことを望みました。

しかし、Aは一切聞く耳を持たずにそこに行くとの一点張りでした。

私たちも、一応心霊系サークルだし、場所も近いことから行ってみるかと仕方なく行くことにしました。

この時に、普段は心霊に興味を示さないAの言動としてはおかしいという事に気付くべきでした。

タクシーで10分ほどで着きましたが、普通の住宅街があり、道路を挟み反対側が公園一帯となっていて住宅街、現道道路もありましたが、手前に見える公園の敷地は不気味でさらに奥の森の方は全く何も見えない状況でした。

公園の入り口に入り、さあどうするか。と一息ついてると、Aが突然小さい声で

「あっちにいる」

と、言いだしました。意味が分かりませんでした。

しかも公園の奥を指さして、繰り返し

「あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる」

を繰り返しています。

そこで、Hが何かを察したのかAに落ち着けと肩をつかみ声をかけていました。

私はこれまで心霊経験など皆無で、Aが冗談なのか、本気なのかすらも分からなくて頭が整理できなくただ、茫然とAとHを見ていました。

Bも一緒でした。

しかし、Aはだんだん声を大きくして

「あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる、あっちにいる」

繰り返し、口調も強くなっていきます。

すると、HがAのほほを思いっきりたたき

「おいッ!!!」

と叫びました。

その瞬間Aは元に戻り、「何しているの?」的な感じで、

「ここどこー?」

といつものAに戻りました。

束の間でした。Hが突然先ほどAが指をさして

「あっちにいる」

と言っていた場所に走りだしたのです。私はこの時、ぞっとしました。

走っているHは人間に見えませんでした。間違いなくHなんですが、なぜか人間的なものを感じなかったのを覚えています。

あっという間にHがいなくなりました。

とにかくわけが分からなかったが、Aに先ほどの事を問いただしました。しかし、Aはここにいる理由すらも分からないと言います。とにかくHがいなくなったことが事実であり、Aが言う事が本当ならただ事じゃないと思い、Hを探すことにしました。

怖い話などで、自分がなにしていたか分からない、突然の謎の行動や言動、聞いたことは度々ありますが、実際自分の目の前でそんな事が起こっているというのはこの時はまったく信じられませんでした。

しかし、恐怖はあります。どうなるんだろう、呪われるのか、憑りつかれるのか、死ぬのか?非現実的なことばかり頭に浮かびました。Aは一番それを強く感じていたと思います。実際に体験してしまったから。

それでも私、A、BはHを探しに公園に入りました。

ケータイの光しかありませでしたが、そこを気にするわけにはいきませでした。

少し歩くと遊具がありました。

違和感を覚え目に入ったのは2つ並んだブランコでした。

ほんとに誰かが乗ってるように1つ動いていました。3人とも声も出ませんでした。

風のせい、そう言いたかった自分をとめたのは、更なるブランコの動きでした。

動いてた方のブランコがピタリと止まり、もう片方が動き出しました。

風な訳がない。。

何分ぐらいブランコを見つめていたかわかりません。気づくとブランコも止まっていました。

今のはなんだ?現実か? 

考えている横で、Bが泣いていました。

文章では伝えにくいですが、かなりの恐怖が私にはありました。

もちろんA,Bにもあったと思います。すべて勘違いであってほしい、本気で思ってました。

それでも、Hがいない事実。

私は、A、Bに戻ってて良いと、心にも無いことを言いました。

正直一人では無理でしたが、男の意地というのでしょうか。

しかしAは行くと言い、Bを待たせるという事で、入口付近を振り返りました。

その時でした。ほんの数メートル後ろに人が立っていました。

人かどうかはわかりません。真っ黒でした。

パニックになった私たちは同方向に走りだしました。

走りながら、声が聞こえました。

子どもの声、1人2人の声ではありません。かなり多くの苦しみ、悲しみのような声でした。

その声は、A、Bにも聞こえたそうです。

気づくと近くの階段を駆け上り広い広場につきました。黒い人も、声もなくなり、そこからは夜景が見えました。

かなり綺麗だったのを覚えています。

もうなにも考えきれなかったとき、Hに電話をかけようとBが言いました。

正直、電話は嫌な事が思い浮かびます。しかし躊躇するわけにもいかず、私のケータイでHにかけました。

Hが電話に出ることはありませんでした。マナーモードなのか、そこからは音も確認できません。

さきほどの、黒い人もあり戻る勇気もなく完全に恐怖に支配された私たちに、恐怖はまた訪れました。

広場には、たくさんの黒い人の姿がありました。子どもから、大人、老人、真っ暗の中で人の形ははっきりわかりました。気づくと、先ほどとは比べ物にならないほどの声も聞こえました。

黒い影がいない方に私たちは逃げるしかありませんでした。

逃げながら、私はだんだん上の方に上っていることを気づいていました。

それでも進む先はそこしかなく、気づけば私たちの前には、小さな祠がありました。

誘われたんだ、それしか頭に浮かぶものがありませんでした。

3人とも、あきらめていたと思います。実際にこうなってみると、恐怖があきらめに変わることを私は思い知りました。私たちが、上った一本道の後から、黒い影が見えました。

声もどんどん周りから聞こえています。

Aは、叫び、Bは泣いていて、もうどうしようもなくなっていた時に、

黒い人が、大勢、突然スピードをあげ、走り出したように私たちに向かってきました。

私たちは叫び、それと同時になにかが割れる音が聞こえました。

。。。。。。。

それからのこは、覚えていません。時間はケータイで朝6時を少し過ぎていて、私たちは、祠の前で倒れていました。

A、Bも起こし、昨日のことを話しました。3人とも同じところから記憶がないとの事でした。

祠の前にお供えのもの花の花瓶が割れていました。

昨日のはこれかと思いました。

時間にすれば、おそらく2時間ほど倒れていたのだと思います。

相変わらず、Hの姿は無く私たちは、下に戻ることにしました。下に降りながら、公園内を見ていて、良くあの暗い中、大した怪我もなくこんな所まで上ったなと思い、やはりなにかに誘われたんだと思いました。

下に降りる途中で、昨日大勢の黒い人に遭遇した広場で、私たちを待っていたかのように、真っ白な服を着た人と、警察官が5人ほど立っていました。

何をしていると問い詰められ、信じてもらえないだろうと思いながらも、昨日の事をすべて話しました。Hの事も。

すると、信じないどころか納得したようで、警察はHの事も知っていました。

とりあえず公園から出るように言われ出口まで一緒に行きました。

白い服の方は、ユタでした。歩いてる途中、そのユタの方からHの身柄を預かっていること、そしてHはもう二度と普通には戻れないという事を言われました。

Hは完全に人格を壊し、戦時中の霊の記憶により生きたままずっと、戦時中の苦しみを味わっているという事でした。

とりあえず、確認してもらうから警察のあとに来いと言われ連絡先をもらいました。

警察では、全てを話しましたがいまだに私たちが信じられないことを言っているにも関わらず、警察側が納得したように事情聴衆が終わり帰されました。

実は、Hは、沖縄から東京の大学に出てきていました。Hの所持品から、H家族への連絡は速やかに行われたそうです。

その後、ユタの場所に行きHの姿を確認しました。

髪は焼かれたように無くなり、涎を垂れ流し、目はどこを向いているかもわかりませんでした。

私たちは、泣いて謝り、必死で元に戻してくれとお願いしましたが、ユタにはここまで来たら終わりだと言われました。

ユタの話よれば、Aが最初に誘われたのかは確認できないが、

Hが憑りつかれたのは、Hの守護神、先祖に原因があるという事でした。

沖縄戦に関わった先祖の霊が、公園内の霊と何らかの関わりがあったことで、そのままH自信に取り込まれたのだと。だからHをもとに戻すことはできないと。まったく関わりのない霊と人間なら除霊できることもあるが、今回は一体的で、除霊はHを殺すことと一緒だと言われ成す術ありませんでした。

私たちが、助かったのは、私たちの誰かの守護霊的なものが、そこにいた霊への威嚇として花瓶を割り、霊を追い払ったのだと言われました。

ユタには、花瓶の事は言ってませんでしたので、信じるしかありませんでした。

新しい花瓶をユタから頂き3人でもとの場所に返しに行き、お礼をいいました。

その後、私たちは東京に戻り現在も普通の生活をしています。

しかし私たちはその後、Hと再会したことはありません。

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怖っ!実話系ホント好き。

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mami様
警察もユタは信じているそうです。実際にその付近では、警察にも不可解な事が昔からあるそうです。これは噂話ではありますが、その公園内をうろついていたカップルの男性側がが突然発狂し、彼女を殺害後、首を振り回していた事件があったなど。

machida様
ありがとうございます。
後日談ではありますが、Bには黒い人ではなくはっきり顔以外の部分は見えていたそうです。
おそらく戦争時の格好だったと思うとの事でした。

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ヤバい、怖過ぎです!これはみんな読むべき名作。

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警察まで動いて信じる土地なんですね…
Hさん、勇敢にAさんを助けたように思えたので、何とも悲しく思えますね…

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