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私の名前は流(ナガレ)。
呪い代行屋をしている。
呪い代行屋というくらいであるから、依頼者は当然、誰々が許せない。呪ってほしいと言ってくるのだが、たまに彼らとは少し違った依頼をしてくる変わった依頼者もいる。
その日訪れた依頼者は、小学校高学年か中学生くらいの少女だった。
『あの…呪い代行屋さんって、ここですか?』
「ええ、そうですよ。ここに来られたということは、誰か呪ってほしい人がいるんですね?」
すると彼女は、とても言いにくそうに
『いえ、そうじゃなくて…呪いを解いてほしいんですけど…できますか?』
と言った
「ふむ、呪いを解いてほしい、ですか。できますが、あなたが呪われているわけではないようですね。」
私が呪われているのが彼女ではないと分かったことに彼女は少し驚いたようだった。
『はい、実は私が小さい時に親に買ってもらった日本人形があるんですけど…』
彼女が言うには、その日本人形を買ってもらった時はとても嬉しくてよく人形と遊んでいたが、何年かたつと人形にも飽きてきて遊ばなくなったらしい。そして、彼女はその日本人形をなんとなく不気味に感じるようになって、捨ててしまった。しかし、数日後人形は家に戻って来ていた。彼女は気味がわるくなり、また捨てたが、何度捨てても、数日後には必ず家に戻って来ているとのことだった。ちなみに彼女の名前は斉藤 凛子というらしい。
『お願いします。あの人形の呪いを…解いてください…。』
「なるほど。何度捨てても帰って来る呪われた日本人形の呪いを解いてほしい、ですか。では、一度その人形をみせてもらえますか?」
『はい、これが…その人形です…。』
まさか持ってきているとは…、正直驚いた。
「では、どのような呪いか、調べますので、少しお待ちください。」
『はい…。』
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30分後
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「なるほど。」
『どうでしたか…?』
斉藤 凛子が不安げにきいてきた。
「結論から申し上げますと、この子は呪われていた訳ではないようです。」
『え!どういうことですか?』
彼女はひどく驚いた様子だった。
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「その子はただ単に大好きなあなたに捨てられて、寂しくて帰ってきていただけみたいです。」
『え…?!』
「人に長く使われたものは魂を持つことがあるようです。特に大切に使われるとそうなりやすいと聞きます。その人形はよく一緒に遊んでくれたあなたに飽きられて、捨てられてしまったことが寂しくて、帰ってきたんです。」
『そんな…。そうだったんだね…。うぅっ…ごめんね…気づいてあげられなくて…もう絶対捨てたりしないからね…。グスッ…。』
斉藤 凛子は彼女の日本人形を抱きしめ、泣いていた。
しばらくして彼女は泣き止み、尋ねてきた。
『ありがとうございます。お金はいくら払えばいいですか?』
「あぁ、お代でしたら、結構です。結局呪いではありませんでしたし。それよりも、その子のこと大切にしてあげてください、あと、たまには一緒に遊んであげてくださいね。」
『はい。本当にありがとございました。』
そう言って立ち去る斉藤 凛子はどことなく嬉しそうに見えた。
作者白真 玲珠
どうも、B-realです。
一応「ある呪術師のはなし」の続編です。
少々文体が変わっているかもしれませんが、ご了承下さい。
呪い代行屋 流の新しい一面を感じていただけたら幸いです。
#gp2015