これは私の友達の家で体験したことです。
彼(A)は大阪市内の古いマンションの最上階に住んでいた。
最上階には彼の部屋一室のみで、玄関を出ると細く暗い道5m程続き、そこに住人たちの洗濯機が壁に沿って置かれてある。
その先へ進むとだだっ広い屋上になる。
Aの家にはよく友達同士で集まり、そこはみんなの溜まり場のような場所だった。
その日も家飲みをしていて、自称霊感があるという一人の友達がこんな事を言った。
「俺ここのマンションの洗濯機置いてるとこと屋上が無理なの。なんか気持ち悪いんだよねー」
霊感なんてない私は、それまで何回そこに遊びに行ってても何か感じたりもなかったので、そんな彼の話を「まぁあそこ暗いからねー」って感じで受け流していた。
自分自身で感じるものはなかったものの、変だなと思うことはあった。
それは、その家で飼ってる猫の行動だった。
誰か外に来ている訳でも、通った様子もないのに急に玄関の前に駆け出して行って、玄関を見上げて鳴いたり、玄関を見つめながらただ座っていたりする事があった。しかも割と頻繁に。
けど、A自体が幽霊だのを全く信用していない人間だったので、これらの猫の行動も、私たちの中で大きく取り上げられることはなかった。
その日は、Aが実家に帰ると言って数日間猫の餌やりをお願いされた。
仕事場の近くだったし、そこの猫を可愛がっていた私は快諾した。
1日、2日は餌やりだけしに行ったが、その日は次の日も休みだし、仕事も遅くなり帰るのも面倒だなと思い、Aも「自分がいない間、好きにしてくれていい」と言っていたのを思い出し、お言葉に甘えて泊まる事にした。
出前を頼み、ひとり酒なんてしながらAが撮り溜めしていた番組を見ていた。
猫も久々に構って貰えて嬉しいのか、ずっと私の膝の上で喉を鳴らしていた。
すると、背後で何か重いものが壁からずり落ちるような音がした。
が、私は気にせずそのままテレビを見続けた。
すると猫がすぐに立ち上がり、音の鳴った場所へ走って行き、ニャーニャー鳴いている。
あまりにもしつこいので、仕方なくその場へ向かう。
別に変わった様子はない。
というか、この部屋に壁に重いものが飾られてるとかはまずないし。
とにかく音の鳴った辺りでそれらしき物が落ちてる事はなかったので、
ほら何もないじゃん。って猫を抱き上げ元位置へ。
夜も更け、そろそろ寝ようか、と思いベッドへ入る。
季節は秋の暮れ、その日は中々肌寒く、頭が寒くて中々寝れなかったので、薄いシーツを頭から被っていつしか眠りについていた。
なんとなしに目が覚めた。
まだ夜だった。
シーツの向こうに黄色い豆電球が光って見えた。
と、私を挟んで2つの影が見え、何やら話をしているようだった。
あーAが友達連れて帰って来たんだな、と思った。
いや、そんなんな訳ないでしょ!
Aの実家は遠い外国で、そんなサクッと帰って来れるようなとこではないからだ。
じゃあこの人達、誰…!?!?
一気に眠気が覚め、血の気が引いて行くのを感じた。
と、影が一瞬止まった。
どうやらこっちが起きてるのに気付いたような感じがした。
話している内容がはっきりわかる訳じゃないんだけど、何となく雰囲気でこのシーツを剥ぎ取るかどうか話し合っているような気がしたのだ。
どうしようと考えてる暇もなく、次の瞬間
スーッと2つの影の手がこちらに伸びてくるのが見えた。
私はパニックになり、咄嗟に勢いよくシーツごとガバッと体を起き上がらせた。
目の前には寝る前と同じ光景、ただ黄色い豆電球が薄暗く部屋を照らしているだけだった。
夢だったという安堵感に浸り、すごい嫌な夢を見たと思った。
と、横に目をやると猫がちょこんと座っていた。
2つの影のあった辺りをただじっと見つめて。
作者退会会員
その後は不気味さは感じたものの、すぐに布団へ入り直し、そのまますぐ眠りについた。
そのマンションで何かあったのかはわからない。
その時期は、変な事が周りで多い時期だった。
#gp2015