短編2
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宅配の方

以前、小さな会社の事務をしていた時の体験。

宅配便でのやり取りが多かったので、配達の方とはすっかり馴染みになっていました。

20代後半〜30代くらいかなぁというとてもきびきびした、明るい方でした。

その日も発送しなくてはならない荷物があり、集荷を待っていました。大体いつも来てくれる筈の11時近くになっても現れませんでしたが、道が混んでいるのだろうと思い、気にせず仕事をしていました。

11時過ぎにふと机から顔を上げると、その方がフロアの入り口に立っていました。いつもならすぐに走って中に入ってくるのに…。私と目が合うと、困ったような、すまなそうな顔で深く頭を下げ、回れ右をして出ていってしまいました。

(??。ちょっと待って。集荷あります!)…と後を追おうとすると、電話がなりました。

電話はその宅配会社からでした。

「お宅の会社を含むルートでドライバーが事故をおこし、対応中。お届け予定の品は現在確認中、集荷は別の者にこれから取りに行かせます…」云々。

あの方はその事故で亡くなっていました。ちょうど、うちの会社に向かう途中だったようです。

これから向かう得意先に、事故で配達ができなくなった事を知らせに回ってくれていたのでしょうか。真面目な人柄の方だったので無性にそんな気がしました。同僚にフロアでその方を見た話をしたら「あの人ならそうやって律儀に回ってくれそうだね…」とみんな妙に納得。

怖いというより、誠実さを感じさせられた不思議な出来事として、今もはっきり覚えています。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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