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あれは数ヶ月前の話だ。
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友達がアパートの俺の部屋に遊びにきたんだけど
その友達が突然
「この部屋…空気重くない?」
って言ってきた。
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俺は「別に重くなんてねーよ」って返したら
友達は「いや、絶対おかしい」って言った。
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何がおかしいってそいつに聞いたら、俺の部屋に霊的な違和感を感じるんだそうだ。
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俺は「気のせいだって。俺ここ住んでて一度も幽霊出てきたことないぞ」
って言った。
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その日は友達もそれ以上言ってはこなかったが、俺はそう言われて少し不安になってしまった。
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翌日、また友達が来て「室内の写真を撮らせてくれ」と言ってきた。
理由を聞くと、どうやら近くの寺の住職に見せるらしい。
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俺は絶対霊的なものはいないと言って最初は拒んだが、そいつがあまりにも真剣なために少し怖くなって撮るのを許した。
そいつは至る所を写真に収めてた。
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後日、友達がその写真を住職に見せに行くというので一緒について行った。
どうせ間違いに決まってるだろうと思っていたから。
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住職は、一枚一枚丁寧に写真を見ていった。
しかし一向に怪しい写真が見つかったと思われる素振りは無かった。
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しかし最後あと数枚くらいの時だった。
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明らかに住職の顔が変わった。
そしてすぐに俺の部屋まで案内するように言われた。
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俺らは言われるままに部屋に案内すると、住職は脇目も振らずある場所ー
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ー俺の寝室へと向かった。
俺らも寝室に向かうと、住職は俺のベッドをじっと見つめていた。
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そして俺らに
「このベッドをどかすから手伝ってくれんか」
と言ってきた。
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ベッドはもともと備え付けられていたもので、俺は越してきてから一回も動かしたことはなかった。
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男三人でどうにかベッドをどかすと
そこには
恐らくメンテナンスとかで使う、床下へと続く蓋のようなものがあった。
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俺はそれを見たとき一瞬ヒヤッとしたが、それも束の間、住職がその蓋のようなものを開けた。
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俺らはおそるおそる下を見てみると
そこには
1メートルくらい下に、砂利と土が敷き詰められているように見えた。
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俺は
「なんだ。何もないじゃん。」と言って
友達の顔を見た。
友達も「そうみたいやな…」と言った。
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しかし、住職だけは俺らとは違う反応をした。
俺らとは違う角度から床下部分を見るなり
「急いで脚立か何かを持ってきてくれ!」
と切羽詰まったような顔で言ってきた。
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その様子を見た瞬間俺はただ事じゃないと思い、急いで物置から脚立を持ってきた。
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住職はその脚立を使い、床下へと降りていった。
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すると
「…これは…まずいな…。おい、君たち、今すぐ寺から○○を連れてきてくれ」
と言われた。
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すぐに友達が「俺が連れてくる」
と言って部屋を飛び出していった。
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俺は寝室のフローリングに一人呆然と立ち尽くしていた。
俺の目線は床下の暗闇へと向いていたものの、住職がいる方向とは真逆だったので、一体何があるのかはまだ分からなかった。
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5分くらい経ったろうか、友達が○○と住職から呼ばれていた人を連れてきた。
○○はすぐさま住職のいる床下へと行くと、すぐさま住職と2人で何かを唱え始めた。
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唱え始めてから数分経ったあたりだろうか、妙な音が聞こえるようになった。
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最初は音が小さく何なのか分からなかったが、だんだんとそれが人の声のようなものであると思った。
しかし、声は男とも女ともとれないような声で、しかも何を言ってるのか分からなかった。
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しかし、耳を澄ますと、あるフレーズを連呼しているように聞こえた。
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そう思っているうちに、住職らの声が止まった。
俺らは怯えながら住職らが上がってくるのを待っていると、住職に続いて上がってきた○○が何かを持っているのが分かった。
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住職は俺らに
「恐らく、これで何事もなくなると思います。ご安心ください。」
と言ってきた。
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俺は住職に
「一体何があったんですか?」
と聞いた。
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すると住職は
「今はあまりお話しすることができません。後日お話致しますのでそれまでお待ちください。」
と言った。
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俺はついでに○○が持っているものについても聞くと
「これも後日まとめてお話致します。」
と言われた。
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住職には、この部屋の問題はすべて祓ったからここで寝てもいい、と言われたが、ここまでの経緯から不安感が募り、その日は友達の家に泊まりに行くことにした。
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数日後、住職に呼び出され事の真相を聞かされた。
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まず住職に言われたのは
「異変に気がついた友達に感謝してください」
ということだった。
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俺が「どういうことですか?」と聞くと
住職は
「もしあのまま、これを放置していたらあなたは危なかった」
と言って、それを俺の前に出してきた。
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それはあの日、○○とか言う人が持っていたものだった。
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よく見てみるとどうやら人形らしい。恐らく古い日本人形だと思う。
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住職は続けた。
「あの時、今は話せないって言ったのは、実はこれに宿っている怨念の正体を掴みきれなかったからなのです」
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俺は言った。
「怨念!?」
「ええ、あの時はこれに宿る怨念をあの場所から引き離しただけだったのです」
住職は言った。
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俺は聞いた。
「怨念って事は、俺の部屋は呪われていたってことですか?」
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「いや、完璧には呪われていませんでした。実際、あなたは何も見ていないのでしょう」
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「ええ、まあ…でも、完璧には、って事はその人形に少しは呪われかけてたって事ですか?」
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「まあそう言うことですね。実際友達の方は何か異変を感じられていたようですし」
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「だからあいつはあんな事言ってたのか…」
俺は後であいつにお礼を言わなきゃな、と思った。
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そして、ある一つの疑問が俺の中に浮かんできた。
「でもその人形は、何で俺の部屋の下なんかにあったんですか?」
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「それはですね…」
住職は自身が調べた話等を交えながら、俺に説明してくれた。
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住職が話していた内容をまとめると、こんな感じだ。
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俺があの部屋に住む前に、そこに住んでいたのはある女性だったそうだ。
その女性は占いやオカルト的なことを好む女性だったらしい。
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その女性は、自分の厄を代わりに受けてくれる身代わりとして、人形を使って儀式的なものを行っていたそうだ。そしてその人形を床下に置いていたらしい。
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しかし、その女性は数年前交通事故で突然亡くなり、そして彼女の怨念がその身代わりの人形に取り憑いてしまったそうだ。
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そして、誰にも見つけられないまま身代わり人形は床下に居続け、そのうち人形の怨念が年月をかけてだんだんと強くなっていったそうだ。
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先日住職が駆けつけて来たときには、既に一人の手には負えないものになっていたために、○○という人を呼んだのだったらしい。
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俺は最後にある質問をした。
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「そういえば住職さんたちが床下で何かを唱えてる間に、何か声がしたんですけどあれってこれが発していたんですかね?」
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「声…どんな声だい?」
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「何かよく分からないんですけど、何かを連呼してました。」
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「うーん…私たちは経を唱えてたから気づかなかっただけかもしれんが、少なくとも私は聞いていないよ…」
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「そうですか…」
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「…でも、○○なら聞いているかもしれない。ちょっと聞いてみよう」
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そう言って、住職は本堂の奥へと俺を連れて行った。そこに例の○○がいた。
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「○○、先日のお祓いの時何か声のようなものを聞いたかね?」
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「ああ、何となくですが…聞こえたような気が」
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「そうか、なんて聞こえたんだ?」
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「そうですね…私には『オワッテ…、オワッテ…』って言ってるように聞こえましたが…」
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「そうか…」
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どうやら俺が聞いた謎のフレーズは「オワッテ…、オワッテ…」と言ってたらしい。
確かに言われてみればそう言っていたような気がする。
恐らく、お祓いが早く終わることをあの人形は望んでいたのだろう。
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謎が解けたところで俺は住職らにお礼を言い、帰路についた。
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途中、体調を崩して今日来れなかったあいつの家に、今日受けた説明とお礼を言いに寄った。
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どうやらあの日以来、熱を出して寝込んでいたらしい。本来であれば俺の方が寝込んでそうだったが。
とりあえず、礼を言って今日受けた説明をすべて話した。
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特に人形の出所と、謎のフレーズについてはそいつも気になっていたらしく、詳しく聞いてきた。
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謎のフレーズについて話していたときだった。
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「あの謎の連呼、『オワッテ…、オワッテ…』って言ってたらしいよ。
まあお祓いが早く終わって欲しかったんだろうね。」
と、俺が言うと
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「そういえばさ、あの声ってどっから聞こえてたんだろうね?」
ってそいつが聞いてきた。
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「え?人形からでしょ?」
って俺が答えると、あいつは多分違うと言ってきた。
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「だってさ、俺ら床下の穴のほう向いて立ってたじゃん。けどあの声間違いなく前から聞こえてきた声じゃないよ…」
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俺は記憶の糸を辿ってみた。
言われてみると、確かに前から聞こえた声ではないような気がしてきた。
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俺はできるだけ鮮明に思い出そうとした。
すると確かに、どちらかと言えば背後あたりから聞こえたような気がしてきた。
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「んー何となくだが、背後辺りから聞こえたような気がしてきたな…」
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「俺も、何となくだけどそんな気がするんだよね…」
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俺らはだんだん怖くなってきた。
もしあの声が背後から聞こえてきたものであったら、背後に何かいたということになる。
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「いや…や、やっぱり前からだろうよ…」
俺は精一杯それを否定しようとした。
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しかし、いくら記憶を辿っても、むしろ背後から聞こえたという説を否定しきれなくなるだけだった。
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記憶を何回か辿っている時だった。
俺は、ふとあのフレーズの本当の内容を思い出してしまった。
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「…今気がついたんだけどさ、あの連呼のフレーズ『オワッテ…』じゃないな…」
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「えっ?」
そいつは驚いた顔をした。
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「今思い出した…『オワッテ…』じゃなくてさ…
あれ、
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『カワッテ…』
じゃ、ないか…」
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「…うん。言われてみれば…」
俺とそいつはこれ以上ない恐怖に襲われた。
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それ以来新居を探す際には気をつけるしかないと思った。
作者大水和馬
実質二作目です。短編にするつもりが…そこそこ長くなってしまいました。ご指摘あればよろしくお願いします!