鏡が割れると7年間不幸が続く
閻魔大王が地獄の亡者を鏡で映して
その過去の悪い事を洗い出して判断するから
鏡を大事にしなくてはいけないと
死んだおじいさんから聞いた事がある。
私が6年生の時姿見の鏡が階段の踊り場に
据え付けてありました。
そこで女生徒たちは自分を写し
身だしなみのチェックを毎日してました。
その鏡は女生徒だけでなく多くの
階段を通る生徒を見てきました。
ある日。
私と数人の友達が帰宅途中踊り場で騒ぎ
鏡にぶつかり、3箇所ほどひびが入ってしまいました。
私を含め4人は先生や親に怒られるのと
弁償しろと言われるのが怖くて、逃げ出しました。
私たちの校舎は6階建で、1階から1年生の順で6階と
5階の間は5年生か6年生しか通らないことが判ってました。
その鏡の件は次の日になると全校生徒の前で
「壊した犯人を点き止める」と体育の一番怖い先生が宣言しました。
私たち4人は、顔を見合わせて「やばい」とつぶやきました。
そして、見せしめのように新しい鏡の横に
壊された鏡を並べて置くようになりました。
私たちはそこを通るたびに鏡を見ないようにして通りました。
そして一ヶ月。
私は居残り組みになり5人で自主勉強を教室でさせられました。
もう5時を過ぎたころ先生が来て「今日は帰りなさい」と言われ
私と4人は帰る仕度をして帰りました。
私はトイレに行き一人少し遅れて
あの鏡の在る階段を下りてゆきました。
一人通る時にあの割った鏡の前を通ると私の顔に
夕日が反射して当たりました。
私はよろけてまたその割れた鏡の横に
手を付こうとした瞬間
鏡の中から誰かが覗いていました。
私は驚いて、その鏡をジーともう一度見渡しました。
割れた丁度中央部分に目が見えました。
私の目ではなく誰か他の子供の目です。
私は後ろを振り返り、あたりに子供が居ないか確かめました。
もう一度鏡を見ると、そこには割れた間を行き来する
小さな子が映りました。
私は怖くなり一目散に階段を下りて帰宅しました。
私はその事があってから家の人に話そうかと思いましたが
話せば後の4人を裏切る事になると思い話せませんでした。
その数日後から、たたりがおき始めました。
まず一人の靴紐が解けて、靴紐に足を引っ掛けて
階段から落ちて腕の骨を折る怪我をしました。
もう一人は、校庭の自転車置き場に停めてあった
バイクが倒れてきて下敷きになり足を骨折しました。
もう一人はブランコの脇を通った時
ブランコの座る板が飛んできて
頭をぶつけて頭を5針縫う怪我をしました。
もう一人は階段の手すりで遊んでいて
手すりを踏み外して
床に落ちて肋骨を骨折しました。
後は私だけです。
これは偶然じゃないと私は思い次は私だと考えると
熱が出てきて学校を休みました。
そして母が私の行動がおかしい事に気がつき
父やおばあさんに話すと担任の先生に報告したのです。
担任の先生が家庭訪問に来て、おばあさんと父と母の居るところで
私の目をジーと見てゆっくり質問しました。
「階段の踊り場の鏡を壊したのはお前だろ」と
ゆっくりした口調で問いただしました。
私は他の仲間がしゃべったと思い話してしまいました。
「そうです。私が壊しました。」父は怒り来るって
私の頭をたたこうとしましたが、先生に止められました。
おばあさんと母は、「弁償しますから勘弁してください」と言うと
先生は「お金の問題じゃないです。彼には良心があり、
それに耐え切れなくて熱が出たのです。」と言うと
「他の怪我をしたやつも同じだろ」と言うと
私はうなずきました。
しばらく黙っていた先生は
「明日は学校に来るんだ。約束だよ」と言うと
引き上げてゆきました。
私は頭の手ぬぐいを外して親に謝りました。
父と母は黙って引き上げて行きました。
一人残ったおばあさんは
「他の人をかばう事は無かったんだよ。お前がしゃべらなくても
他の人は助けてくれない。お互いにかばい合うと傷は深くなるんだよ」と言うと
「壊した鏡は何千人と言う人を映してきた。
その鏡の中に怨念や霊が宿る。それを壊したとき
災いが湧き上がり壊したものやその家族に災難をもたらす」と言うと
「明日は学校に行きみんなの前で誤りなさい。
誤ったものには災いは降りかからない。」
と言うと引き上げてゆきました。
次の朝。
学校に行くと朝礼の席で私は校長先生と一緒に段にのぼり
みんなに迷惑をかけたことを堂々と誤りました。
放課後。
置いてある壊した鏡の前に行き、あの目と子供に対して頭を下げて謝りました。
後の4人は私が全校生徒の前で謝ったので、沈黙を続けていました。
あの鏡は私が誤ったのでどこかに片付けられました。
大人になった私は嘘や人をかばう事に対する罪悪感を覚え
2度と壊したものに対しては正直に話すことを忘れませんでした。
あの鏡の中の怖い目と覗いていた姿を
大人になった今も忘れる事は在りません。
作者退会会員
秋の夜長をこの怪談で楽しんでください。