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中編3
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深夜のコンビニ

後輩は、某ソンの深夜バイトをしていた。

そのコンビニは、深夜になるとかなり暇になるらしい。

後輩はいっしょにバイトしている先輩と、いつもバックルームでのんびり漫画など読んで過ごしていた。

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ある日のこと。

いつもと同じようにバックルームでお菓子を食べながら、後輩は先輩と駄弁っていた。

仕事と言えばたまにモニターをチェックするくらいである。

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モニターは画面が4分割されていて、レジ2箇所、食料品棚、本棚を映しているのだが、

ふと見ると、本棚のところに女の人が立っているのを後輩は見つけた。

腰まである異様に長い髪をした女の人だ。

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「おかしいな、チャイム鳴らなかったぞ」と先輩はいぶかしむが、

たまに鳴らない事もあるので、さして深く考えず二人はまたしゃべり始めた。

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しかし、である。

いつまで経っても女の人は動く気配を見せない。

本を読んでいるのかと思えば、何も手にしていない。

ひたすらじっと本棚を見つめているだけである。

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「おい、こいつ万引きするつもりなんじゃないか」

先輩が言った。どことなくおかしな雰囲気のする女の人である。

後輩もその考えが浮かんだところだったので、頷いた。

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二人で挟み撃ちすることにして、バックルームを出る。

先輩はレジ側から、後輩はバックルームへの出入り口から本棚へ向かう。

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いざ本棚へ到着してみて、二人は首をかしげた。

そこには誰もいなかったのだ。

おかしい。絶対挟み撃ちにしたのに…。

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すると、トイレのほうから水を流す音が聞こえてきた。

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何だ、トイレに入っていたのか。

おかしな人だな、と思いつつ、二人はすぐバックルームへと戻った。

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しかしモニターを見て、二人は初めてぞっとした。

さっきと全く変わらない立ち位置で、女の人が本棚を見つめていたのだ。

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早い。早すぎる。

トイレからそこへ向かうのと、バックルームへ戻るのとでは、明らかにこっちの方が早いはずなのだ。

しかも、なんで同じ格好で本棚に向かってるんだ?

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もしかして、モニターの故障では。

顔を見合わせ、頷きあって二人はもう一度、バックルームから挟み撃ちの隊形で本棚へと向かった。

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すると、また女の人はいない。

冷や汗がにじむのを感じながら、今度は何も言わずに二人はバックルームへと戻った。

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無言で、しかし真っ先にモニターを確認する。

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「あ、いなくなってるぞ…」

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先輩が呟いた通り、モニターからは女の人の姿は消えていた。

後輩の心中にほっとしたものが広がる。

よく確認しようと、先輩の横に顔を乗り出した。その時。

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「待て、動くな」

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先輩が突如、押し殺した声を出した。

は?と思ったが反射的に従う。

二人、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。

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「いいか、絶対に今振り向くなよ」

やはり先輩が押し殺した声で言った。

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何でだろう、と思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。

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画面の反射で、自分の顔と先輩の顔が映っている。

しかし、その真ん中。

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もう一つ、女の人の顔が覗き込んでいたのだ。

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悲鳴をこらえ、後輩はまさしく硬直した。

じっと耐えること数分、その女は

「…………」

と何事か呟くと、すっと離れた。

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そしてさらに1分。

もういいぞ、と言われて後輩はやっと息をついた。

恐る恐る振り向いても、誰もいない。

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どくどく脈打つ心臓を押さえ、後輩はモニターから離れた。

「ここって、なんかでるんやなぁ~」

先輩は感慨深げに呟き、後輩のほうに同意を求めた。

「そうですね」

と、先輩を振り向いて、後輩は再び硬直した。

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その視線をたどったか、先輩もモニターのほうへ向き直る。

そこには、さっきの女の人が。しかも今度は、

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カメラの方を向いて大口を開けて笑っている!!

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もう二人は何も言わなかった。

何も言わず、某ソンを裏口から飛び出したと言う…

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