私はカラスが苦手です。
これは夏の初め頃の出来事です。
私の部屋は二階にあり、エアコンが苦手な私は、日中は扇風機をつけて窓を全開に開けています。
ある日お菓子を摘みながら漫画を読んでいると、すぐ近くでバサバサとモノ凄い羽音がしました。
驚いて見てみると、一羽の真っ黒いカラスが窓の桟の部分にとまっていました。
近くで見ると思っていたよりも断然大きくて、初めはもっと違う種類の鳥かとも思いました。
「ガ、ガ、ガ、」と小さな声をあげて、首をクルクルと左右にふりながらも、その目線は片時も私から離れません。
「何か用?」
と、今思うと私はカラス相手に馬鹿な質問をしていました。
『 にゃおん〜 』
カラスはクチバシを閉じたままで、ハッキリと猫の声で鳴きました。
『 にゃおん、にゃおん、』
バサバサと飛び立ったカラスの後を追って窓の外を見ると、そのカラスは裏手の森の中へと姿を消しました。
その時、森の中からガーガーと大量のカラスの鳴き声が辺りに響き渡りました。
無性に気になった私は、普段は人が入る事のない竹藪を掻き分けながら、カラス達が鳴いているであろう場所まで入っていきました。
すると、
近所に一人で住んでいる身寄りのない坂本のおじいさんが、いつもの作業服姿のままで首を吊ってぶら下がっていました。
おじいさんのお腹はカラスに突っつかれたのか、避けて内蔵が飛び出しています。
そしておじいさんの下に溜まった内蔵と汚物の山に、沢山のカラスが群がり我れ先にと突っつきあっていました。
そのすぐ近くには、おじいさんが飼っていた黒猫ちゃんの死骸も転がっていました。
よくおじいさんの家の前で可愛がっていた子なので、その猫ちゃんだとすぐに分かりました。
それもまた首が取れかかり、カラス達の餌食になっていました。
そして他のカラスよりも一回りカラダの大きなカラスが近寄ると、猫ちゃんの千切れかかったその首をクチバシでもぎ取り、ガーガー言いながら飛び立って行きました。
今思うとあの時のカラスの声は、この猫ちゃんの声だったのか?とも思いますが真実は分かりません。
あまりの事に腰を抜かして泣いている私の頭の上から、先ほどのカラスの鳴き声が聞こえました。
「アーー アーー アーー」
カラスは青く澄み切った空をゆっくりと旋回していきました。
私はカラスが苦手です。
お
わ
り
作者魔衣子
間違えて削除してしまったお話の再投稿です(o_o)