戦国時代から武田信玄の家系である
私の家には、奇妙な物が多々有った。
その中のひとつが魔鏡である。
ある日、蔵の中で不思議な影を見つけた。
もう何年も蔵には誰も入らず、クモの巣だらけの蔵には
色々な昔のものが放置されていた。
その中で、蔵の窓から入る光を受けて、反射する鏡を見つけた。
鏡は、相当古く戦国時代よりも古い時代の風貌をかもし出していた。
私は鏡を見つけると誰にも知られないように部屋に持ち帰った。
部屋で、鏡のホコリをはらい光にかざして見とれていた。
鏡を少し傾けた時だ。
天井に鏡の影が映り、その中に着物姿の女性が映し出された。
私は驚き、鏡を手から放し、畳に落としてしまった。
畳の上とはいえ、大きな音がして、両親や祖母に知れることになった。
部屋にきた、両親は「どうした今の音は?」と詰め寄ってきた。
私は正直に床に落とした鏡を見せた。
父は「御先祖様のものか?蔵から持ち出したな?」と言うと
私を怒った。
「勝手に持ち出してはいけない。何があるか分からない。」と言うと
鏡を取り上げて部屋を出て行った。
部屋を出たとたん父は階段を転げ落ちた。
みんなは驚き唖然とした。
階段の下では父が取り上げた鏡が、父が横たわる頭の脇で
乱反射して鏡の中の女が床の脇の壁に浮き上がっていた。
ははも祖母もそれには気づかず、父の介抱に夢中だった。
私にはその鏡に映る女は笑っているように見えた。
父を3人で起こし、病院に連れて行った。
結果は、肩の骨を折る重傷で全治2か月との診断だった。
3人はそれを聞くと顔を見合わせてがっかりした。
「どうして落ちたのか?」と父に聞くと「何かにつまずいた」と言うだけだった。
その何かはだれも見て無い
家に帰ると私は鏡を元の蔵に返そうと廊下を通り蔵に向かった。
すると不思議な事が起きた。
鏡が持てないほどに熱くなり、私は思わず手を放し鏡を床に捨てた。
鏡は床を滑るように流れて、祖母の部屋の前に止まり
祖母の部屋の明かりに反射して、またあの女が現れた。
私はその影を見つめていると女が話しかけてきた。
「呪ってやる」とつぶやいた。それを言い終わると女の影は消えた。
というか祖母がふすまを開けて鏡の反射が遮られたからだった。
祖母が「どうかしたか?」と床に落ちた鏡を拾おうとしたとき
ふすまが祖母の上に覆いかぶさるように倒れてきました。
祖母はふすまの下敷きになり頭をぶつけて気を失いました。
これで2人目です。
祖母はすぐに気を取り戻しましたが、頭から血を流してました。
私は母を呼び一緒に病院へ連れてゆきました。
頭の傷は3針縫う深い傷でした。
医師は「何かに切られた痕のようだ」とつぶやきました。
私はそのつぶやきを聞き「あの女がやったのだ」と思いました。
祖母と家に帰る途中「今度は、私か母だ」と思うと怖くなり
祖母にそのことを話しました。
祖母は「見えた事をどうして早く言わない」と私をしかりつけました。
家に着くと鏡を風呂敷に包むと、「一緒に来るかい」と私を誘い
家を後にしました。
祖母は88歳とは思えない足取りで、急いで家の墓地の有る
お寺に向かいました。
墓地に着くと真っ先に、私たちの先祖が眠る墓に向いました。
墓に着くと、祖母は先ほどの風呂敷から鏡を出した。
西日に照らされ鏡は反射して墓の石塔に斜めに光をさした。
その途端「ギャー」という声がどこからか聞こえた。
私と祖母はあたりを見渡したが何も見えなかった。
そして、鏡は普通の鏡に戻った。もう光の加減で女は浮かばなくなっていた。
祖母は、先祖が助けてくれたと言った。
しかし鏡が発した声だったのかはわからない。
おばあさんが家に持ち帰り何年たったか分からないが
祖母は鏡を隠したまま、あの世に行ってしまった。
父や母私はあの鏡を探そうとはしなかった。
作者退会会員