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私の実家には、市松人形がいる。
私が生まれた年にばあちゃんがプレゼントしてくれたそう。
実家の両親はあまり霊的なものとか、昔からの言い伝えとか信じてなくて、その市松人形もガラスの入れ物に入れたりせず、そのまま飾っていたらしい。
人形とかって霊的なものが入りやすいから、ガラス張りのもので囲っておかないといけんって聞いたことあるけど。
その市松人形が、ある日やらかしてくれた。
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それは高校三年生になった夏のある日。
その日は、高校野球の県予選の日で、私は吹奏楽部。2つ下の弟も同じ高校で野球部。
両親、5つ下の弟も一家総出で応援に出かけていた。
一足先に終わった私が帰宅したのは21時。
霊感が少しだけある私は、実家に1人でいるのがこの上なく嫌いで、気を紛らわせるために友達に電話をかけて今日の話に花を咲かせていた。
そんな時---
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shake
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ペタッペタッ‥‥
‥‥ペタッ‥‥
かすかに聞こえる、まるで素足で歩いているような足音。
その時私は2階にいたが、2階のすぐそこの屋根を歩くような音が聞こえてくる。
「ちょっと待って!」
「えっ、どうしたん?」
「変な音がするんよ」
「変な音ってどんな‥‥???」
「足音‥‥」
「えっ、きもっ!大丈夫なん?」
こんな会話を友達とした覚えが。
そんな足音も近づいては遠ざかり‥‥まるで我が家の2階部分の屋根をぐるぐるぐるぐる回っているようだった。
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何となく2階に居づらくなった私は、1階のリビングに降りることにした。
怖くて怖くて動悸がする。
その間にも、まるで頭の中に直接響くように足音は聞こえてくる。
ペタッペタッ‥‥
‥‥ペタッ‥‥
‥‥ペタッペタッ‥‥
その足音がついに、2階の私の部屋に入って来る気配がした。
今思えば、何でそんなに詳しく足音の主の所在が分かったのかは分からない。
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「ヤバイヤバイ!階段降りてきよる!」
「えっ、本当に?嘘やろ」
「嘘やないって!どうしよう‥‥」
若干の霊感があるとは言え、お祓い的なものとかそういうのは知らないし、取り憑かれやすい体質だからとお寺の人にもらった御守りと身を守る読経が書かれた紙は自分の部屋に置いてある。
(自分、馬鹿や‥‥)
自分の、大事なものを常に持ち歩かない性格をこの時は本気で呪った。
その間にも足音は2階の階段をゆっくりと降り、1階の少し長めの廊下をこちらに向かって歩いてきている。
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shake
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ドンドンドン!
ついにリビングのドアを叩かれた。
恐怖のあまり固まる。
リビングのドアの縦長に伸びるすりガラスごしには、客間に飾ってあるはずの市松人形の着ている着物と同じ真っ赤な着物を着た手がうつっている。
(こええ‥‥)
体操座りをして、友達と電話していたことも忘れ黙り込んでしばらく時間が経った頃‥‥
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「あ~!えらかった~!!!!」
「今日くっそ暑かったね!」
「マジお疲れ様やし俺ら!」
みんなが帰ってきた。
うおおおおお、安心(´;ω;`)!!!
気付いたら人形の手も消えて、あの独特の重い暗い空気感もなくなっていた。
どうせ家族に話してもあんまり信じてもらえんやろうなと思い、話していない。
市松人形は、何を伝えたかったのでしょうか。。
それから時々夢にその市松人形が出るようになりました。
作者あーやん
実話です。