昔々……
…というほどではありませんが
あるところに、たった一人の愛する人とたった1つの大切な場所に住む仲間を守るために1人で見えない怨念と戦い抜いた人がいました。
nextpage
その人は悪意の怨念を抹殺するのではなく、闇の中にわずかに輝く
かすかな良心の光を見つけ出して解り合う方法で戦い続けました。
彼女は怨念の中にも、悪意の有るものと無いものが存在することを知っていたのです。
nextpage
しかしその人は仲間の笑顔を曇らせたくない為に
陰で独り、見えない悪意と戦い続ける選択をしました。
nextpage
怨念は少しずつ少しずつ
確実にその人を疲弊させていきました。
nextpage
ある日、突然の不幸がその人を襲います。
愛する人が帰らぬ人となってしまったのです。
nextpage
その人は、仲間に助けを求めました。
苦しい…苦しい…誰か…
その声は無情にも、悪意のこもった怨念にかき消されてしまったのです。
その人は絶望しました。
自分の発言を皮切りに大切な場所を怨念が瞬く間に広がっていくのを目にしたからです。
nextpage
その人は立ち上がろうにも、今まで蓄積された怨念の傷のせいで上手く身体が動きません。
ついに怨念は、仲間にその手を伸ばそうとしました。
その瞬間、最後の力を振り絞りその人は怨念を道連れにその場所から引き離しました。
nextpage
仲間の抵抗とその人の働きで、大きな傷跡を残しながらも
その場所に再び平穏が帰ってきました。
その人はその代償に、愛する人の墓へ語りかける為の声を失いました。
nextpage
その人は声を取り戻すために仲間に別れを告げ、旅に出ました。
愛する人への鎮魂歌をもう一度歌う為に…
作者Compensation for lost
初投稿です。
[怨念]は別の単語にも変換可能です。
ただ、どちらも恐ろしい刃となり人を傷つける事には変わりありません。
どうか皆様お忘れなきよう…