何かがいる。

中編3分

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使い方

何かがいる。

もう夏だしみんな海行くだろうから怖い話するわ。昔、ラブホテルの副支配人をしてる時の話、普段は都心で勤務してるだけど、湘南の方のあるホテルが人手不足で、冬に1日だけヘルプにいったんだ。

冬の湘南側のホテルなんてずっと客来なくて暇も暇。昼から深夜までお客なんて5-6組くらいだった。しかも古いホテルだから暖房機器の機械音が結構響くのよ、通気口も部屋繋がってるところ多いから、盛り上がってる客の声もたまーに廊下とかに響いてた。その日はフロントに俺、あと清掃のおばちゃんaとbの2人。深夜になるとおばちゃんbと俺の二人になった。

今日の宿泊客は2組で空き部屋は30部屋くらいあった。このラブホテルはフロントでキーを渡して部屋の鍵を開けるタイプなんだけど、フロントの内側のランプで、鍵が閉まってると点灯、鍵が空いてると点滅、キータックに鍵がある空き部屋のランプは消灯っていう感じでわかるようになってるのよ。ちなみに3階建ね。

使用中は客がいる202号室と301号室の2部屋、ランプは点灯。あとおばちゃんが掃除中の205号室。掃除はドア開けて掃除するからランプは点滅。深夜3時ごろ、205号室のランプの点滅が点灯になったから、おばちゃん清掃終わって鍵締めて出たんだなぁと思ったんだけど、次に208号室のランプが点滅したのよ、あれ鍵フロントあるけどマスターキーか？しかもそこ清掃終わってるからおばちゃん間違えて入ったかなと思って部屋に電話しようとしたら、フロント前のエレベーターが空いておばちゃん降りてきたのよ。

あれ？と思っておばちゃんに聞いたらマスターキーも持ってないしその部屋には入ってないと。あれーと思いながら208号室の鍵を持って、フロント変わって貰って見にいったのよ。まあ古いから建て付け悪いし、そもそもランプの故障かもと思った。

sound:26

が、208号室の前に来ると、ドアが少し空いてる。ま午前中ここを掃除したおばちゃんaが鍵をきちんと締めなかったんだろうと思いつつ部屋を点検。ベッド綺麗、トイレ問題なし、アミニティーも全部揃ってる、お風呂場もー。。。ん？風呂場の床に埃が落ちてる。もーちゃんと掃除してないじゃんと思った矢先、戦慄が走った。

shake

通気口が空いてる。

内部から誰かが？

恐怖が急に襲ってきて、すぐに部屋を出てフロントに走った。フロントでおばちゃんに説明すると、「あー実は留め金が緩くて通気口の蓋が空いちゃってる部屋けっこうあるんですよ、両面テープとかで止めてる部屋もありますし」と。俺は安堵した。そりゃ今日初めてきたからそんな事情知らなかった。

つまり昼間のおばちゃんが鍵をキチンと閉め忘れて、それがたまたま深夜3時ごろ緩んで空いてしまって、風呂の通気口もたまたま留め金が劣化して両面テープ止めしてる部屋だったという訳。まテープなんて気づかないうちによく剥がれるからね。

胸を撫で下ろして、両面テープと脚立を持って再び208号室へ。あー怖かったと思って通気口を閉めようとしたら、ある違和感に気づいた。

207号室に伸びているダクト内は埃まみれだが、209号室へ伸びているダクトは埃がない。

shake

sound:19

誰かが這ったあとだ。

小柄な女性、小さい子供ならギリギリだけど這えるくらいの大きさだけど、、、

一体誰がなんの為に？

その日は朝までおばちゃんと二人で震えてたわ。引き継ぎで支配人に口頭説明、会社にも報告書として提出したんだけど、状況から考えて何者かが侵入したかも？だし、ほんと全部本当に偶然が重なっただけで誰も這ってないかもしれない。とにかくこの話題がこのあと社内で出ることはなかった。ちなみにフェイクも着色も加えてない。

そのあと転職したから顛末は分からないんだけど、、、

湘南近くのラブホテルで、208号室で泊まるだけはやめとけ。

たぶんなんかいる。