―イナイ……オモイダセナイ…アノコノコトガ…
騒がしい足音を立てながら小学生が私の横を通り過ぎていった。ランドセルについている鈴がチリンとなった。
「ランドセル…」何だろう…脳裏にいくつかの情景がよみがえる…―――
クライクライ フカイモリ……カゼニナビククロイカミ……そしてヒトケノナイ川原… チリン…
はっ…とした。 アノコは誰…?…いやだ…いやだいやだ…オモイダセナイ…オモイダシタクナイ!!
触れてはいけない記憶に、触れてしまった瞬間…私の足は、あの川原へ向かっていた…。
……あの日…私たちはあの川原で遊んでいた。
チリン…
……アノコのランドセルに着いている鈴が川に落ちた。
チリン…
……アノコは鈴を拾おうとして足を滑らせた。
…チリン
…そして……
「清子っ!」……私はとうとうあの川原に着いてしまった………―思い出した……。アノコは、いや…清子は、大切な鈴を取ろうとして川で溺れてしまったんだ!!……そして私は彼女を見殺しにした。私はその記憶を消そうとした。…
私は悪くないと。 …鈴の音が聞こえる…。
…チリン
何かが流れてきた…。「…ランドセル?」
ランドセルに、黒い髪の毛が絡まり着いている…。
「恵美…」
背後から聞こえたその声は遠い昔に消えたモノの声…
「ヨクモミゴロシニシタナ……シンユウダトオモッタノニ…ヒトゴロシ…」
「きゃあぁあぁああっ――――!!」
………チリン
怖い話投稿:ホラーテラー noa+。さん
作者怖話