小さい時に本か何かで知った話です。
ある裕福な家庭に、ミミという女の子がいました。
ミミは生まれつき目が不自由で、手術しても治る可能性はきわめて低いだろうと言われていました。
しかし幼いミミは、いつか必ず自分の目は治って、太陽の光や、色鮮やかな花々を見る事が出来ると、信じて疑いませんでした。
ミミの誕生日。お父さんとお母さんは、ミミに可愛らしい西洋人形をプレゼントしました。
その西洋人形は、綺麗な金髪で、空のように青い瞳をしていました。
ミミは人形を貰って最初はとても喜んでいましたが、人形の閉じたり開いたりする瞳に触れた瞬間、
「…どうして!?どうして私の目はずっと閉じたままなの!どうしてこのお人形のように開かないの!」
と、人形を床に投げつけてしまいました。
両親は泣きわめくミミをどうする事も出来ず、暫く部屋に一人にしてあげました。
ミミは両親が部屋からいなくなると、手探りで人形を捜し、そしてぎゅっと抱きしめました。
「ごめんね、ごめんね、痛かったでしょ、ごめんね」
ミミは人形の頭を撫でながら、何度も謝りました。
ミミは人形をマリーと名付けて、それはそれは大切にしました。
そしてマリーにいつも話かけるのです。
「マリー、私の代わりにあなたが見てちょうだい。青い空や、赤や黄色のお花さん達を。…もし私の目が治ったら一緒に見ようね、約束よ」
ある日、ミミにとっても良い話が来ました。
ミミの目を治せるかもしれないというお医者さんが現れたのです。
ミミや両親はとても喜んで、目の手術を受ける事にしました。
ところが、残念ながら手術をしてもミミの目は治りませんでした…。
ミミや両親は絶望して、涙がかれるほど泣きました。
ミミはその夜、マリーを抱いてベッドに入りました。そしてマリーに自分の今の悲しみを全てぶつけたのです。
ミミが眠りについた頃、マリーは独りでに、そっとその青い瞳を閉じました。永遠に……。
翌朝、ミミは両親のいるリビングへとやって来ました。
「おはよう…。太陽の光がすごく眩しいわ…。」
両親はミミの言葉に驚きました。ミミは目が見えるようになっていたのです。
しかもミミの瞳は空のように青い色をしていました。それは間違いなくマリーの瞳でした。
「マリー、あなたが私に瞳をくれたのね。ありがとう、本当にありがとう」
ミミは永遠に閉じてしまったマリーの瞳を見つめながら、何度も何度もお礼を言いました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話