短編2
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いってらっしゃい

たまに思い出す昔の事

朝早くに買い物に行こうと忙しく支度をしている家族らを尻目にまだ寝床から起きてもいない僕…

その内、「置いてくよ!!」

と、少し強めに言われたのが気に入らず

あ~でもない、こ~でもないとグズっていたら、結局留守番をするはめに

家族が居なくなっても寝床から出ないで

ボー、としていたらいつの間にか眠っていたようです

目覚めた頃には午後一時を回っていました

家族はまだ帰って来ていない様子

その日は凄く良い天気で窓から注ぐ光が少し眩しかったのをよく覚えています

家の中はシン…と静まりかえっていました

いつもと違う表情を見せる我が家に少し戸惑いながらも起きて顔を洗います

顔を洗っていると、何だか後ろから誰かに見られている感覚に襲われました

しかし、後ろを振り向いても誰もいない…

少し…怖くなった…

今…この家に居る事が

独りで居る事が…怖くなったんです

そう思うとすぐに着替えて外に遊びに出ようとしました

準備もでき、あとは靴を履いて外に出るだけ…

そのはずだった

何を思ったか…僕はその時、家には誰も居ない事を知りつつ

「いって来ま~す」

と、大きな声で言ってしまったのです(今、考えてみても何故、怖くなっていたのにそんな事を言ったのか…)

返ってくる筈のない返答を待ちます

(何言ってんだろ?)

と思い、玄関のドアを開けようと手をかけた…

次の瞬間…

家の奥の方から女の人の声で

「いってらっさゃい…」

と、確かに聞こえてきたんです…

でも、家には誰も居ない…何故…!?

半分パニックを起こしているとまた…

「いってらっしゃい」

声が聞こえました…何だかさっきよりも近くで言っている感じがしました

あぁ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、そう思いましたが体は思うように動きません…

すると…

また…「いってらっしゃい」

確実にさっきより近付いて来ている…もうドアを一枚隔てた辺りで言っている気がしました…

そう思った瞬間、もう泣きながら家を飛び出しました…

その後、近所のおばさんの家まで泣きながら行ったみたいです

どうやってそこまで辿り着いたか覚えていませんが、その時の恐怖は今でも鮮明に覚えています

誰も居ないはずの家からの返答…それが何を意味するのかは今でもわかりません

あれ以来、当然ですが無人の家に対して「行って来ます」は言ってません

怖い話投稿:ホラーテラー 独りさん  

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