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短編1
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夜咄蔵

わたしのうちはとても裕福なの。裕福なうち。

大きな土地に大きな家だし、部屋もたくさんある。

車も何台ももっているし、みんなうらやましいって言ってる。

車はとうぜん高級車。

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蔵だってある。

わたしの知り合いの歴史が好きな子はほんとうに裕福なうちには蔵があるっていってた。

中にはたいてい高級なものが入ってるって。

いいよね。高級なもの。

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まだ一度も中に入ったことがないけど。

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わたしのうちはお茶をやるの。

それで、いつも寒くなってくると親戚の人たちもみんな集まって夜咄をやっていて、わたしはこれを手伝うわけ。

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手伝うっていってもそんな難しいことはしなくて、部屋の中に人が全員そろったか障子の隙間からこっそり覗いて、揃ったら合図をおくるだけ。すごく簡単。

中の人に覗いている事を気が付かれないようにしなくちゃいけないけどね。

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夜咄はとってもきれい。暗い部屋に明かりは蝋燭の火だけ。これがゆらゆらゆれてみんなを照らすの。

照らされたみんなの顔はいつもと違ってみえてなんだか不思議。

わたしはずっと覗いているの。

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終わると今度はみんな部屋からでていくから、わたしはみんなが部屋からちゃんと出るのをみたら合図をおくるのね。これもすごく簡単。

合図をおくったらここでのわたしのお手伝いはおしまい。

あとは蔵の鍵を必ずかけて、わたしはみんなのいるところに戻るのよ。

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