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中編3
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怒る人

蒸し熱い夏の夜、私はお風呂でさっぱりした身体を冷やそうと、一番北側にある部屋でノートPCを広げて陣取った。

夜9時からの私の楽しみな時間の始まりだ。

ネットサーフィンやショッピングを飽きるまで、時には0時過ぎてもやっている。

リラックスパジャマに左手には冷たいグレープフルーツのジュース、

右手にはポテチの大袋といういでたち。

愛猫の茶美が今夜も助手として膝の上に納まります。

今日も経済ジャーナリストの記事から始まって、

ジャンルは問わずにブログや動画を見て回る。

おっとこれ欲しいけど高いな~・・・なんて言いながら、ふと目に留まった実話怪談サイト。

今夜のおかずはこれですな~ってな感じで、ポテチを頬張りクリッククリック。

100話怪談を読み始めた。

今夜だけでは読めない量だから、眠たくなるまで読んでは数日が過ぎた。

さて、最期の夜の100話目になっても、私はお決まりの大事なことをすっかり忘れていた、

というか考えもしなかったんだけど、

何故こんな重大な規則に気が付かなかったのか、相当に後悔することになった。

そうです、100話語ると怪現象が起こるんでしたよね。

100話目を読み始めた頃、愛猫チャミが膝の上から私の背後をじっと見始めた。

何度も何度も背後を仰いではガンミしている。

・・・・私は、虫でもいるのね、と気にも留めずに読みふける。

そして、半ば程まで読み進めたころにそれは起った。

スクロールが勝手に高速動作したのだ。

「えっ?!」て思う暇もなく、マウスに掛けた人差し指が尋常ではない速さで勝手に動いた、

いや動かされた。

チクチクチクチクチクチクチクチクチクッ。

あんな高速クリックが出来るとしたら多分宇宙人だろう。

あんぐり口を開けたまま勝手に動く自分の指を見る。

他人の指のような自分の指に、激しい恐怖が噴き上がると同時だった。

助手として膝にいた愛猫の様子が異常な動きを始めた。

チクッという人工音に合せて瞼がけいれんし、

頭が顎が跳ね上がるように高速上下している。

「・・・・と、止めて!」

言葉にはならないか細い声でそう言った瞬間、

チャミは膝から50㎝ほど飛び上がり、フローリングの床をかき鳴らしながらリビングへ走って行った。

「チャミ!チャミ!」と猛ダッシュで追いかけた。

チャミはテーブルの下で硬直し泡を吹いていた。

舌を噛み切らないように口の中に夢中で指をいれた。

背中を摩ったり叩いたりしながら名前を呼んだ。

長い長い時間そうしていたように感じたが時計を見ると1分も経っていなかった。

硬直が解け意識が戻っても、チャミはテーブルの下から出ようとせず、

キョロキョロと周囲を警戒して怯えていた。

何処かから、私を見据える気配に鳥肌が止まない。

そこへ、

「なになに何なのどうしたの?」

と息子が心配して出てきた。

チャミを抱き上げ撫でながら、奇怪な現象の一部始終を説明した。

すると、あり得ない事柄が息子の口から飛び出した。

「お母さん北側の部屋で一人でキレてただろう、何キレてたの?

電話で誰かと喧嘩でもしてたの?低い声ですっごい怒ってたよ。」

というのだ。

「ホントに?お母さんしゃべってないわよ。」

やめてくれよ、私はたった一人でしゃべったりしないし、ましてやキレるなんて・・・

まぁたまにはあるけど年に一度くらい、仕事で仕方なく・・・

とにかく、どんな音も出していないはずだ。

家中の電気を付け、珍しく暖かい緑茶を息子が用意してくれた。

そして、

「・・・アレ・・・、そういえばアレお母さんの声とは違うわ。」

きっと興味本位で見ていた私に、どなたかの霊が怒ったのでしょう。

翌日、チャミはかかりつけ動物病院で診察を受けました。

「脳圧が上がっていますね。」

とのことで、発作予防のために、毎日シロップ薬を欠かさず飲む事になりました。

時折、目覚ましの電子音でも硬直発作を起こす前触れが見えます。

チャミはそのたびごとに、

周囲の気配に耳を澄まし、怯えるのです。

以来、

あらゆる音を慎重に取り扱い、静かに暮らしました。

うかつに心霊サイトに立ち寄ってはならないと反省しながら

懲りずにこのこ怪談サイトに投稿します。

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windさん、初めまして。
先日は【ミサライ様】に怖ぽちくださり、ありがとうございます。
作品読ませていただきましたが、初投稿とは思えないほど事細かに書かれていますね!
飼っていた猫はいち早く異変ですか、霊の存在に気付き、windさんを守ったかも知れませんね。
動物はそういうのには敏感だと聞きます。
ひしひしと怖さの伝わりました。

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