私の住んでいた近所に焼身自殺があったらしく、十年近く無人のまま放置されている廃アパートがあります。
地元ではかなり有名で、
「窓に人影が映る」
「夜になると声が聞こえる」 etc…
色々な噂があり、夏になると必ずと言って良いほど名前が上がる場所で、先輩達の武勇伝も良く聞いたモノです。
私が実際に足を踏み入れたのは2年前。その時起こった話です。
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2年前、私の実家で高校時代の友人2人と飲んでいた時、ちょうどTVで心霊番組が放送されていました。
ふとあのアパートの事を思いだし、
「こういう場所があってさー…」
と私は語り始めました。
すると、友人(AとBとします)が
A「そこ知ってる。前に聞いた事がある。」
と言い出しました。
ちなみに、AとBは別の町の出身なので地元からは離れています。
そこまで有名だったのかと驚くと同時に、気になる事を言いました。
「3階の302号室には女の幽霊が出て、声を掛けられる。」
何故、気になったかと言うと、私が聞いた話は結構曖昧な話が多く、部屋番号まではっきりした話は聞いた事が無かったからです。
それに、焼身自殺があったとされる場所は1階で、3階で何か出たという話は聞いた事がありませんでした。
違う場所の事だろう。と言いましたがBも聞いた事があるといい譲りません。
「じゃあ近いし、実際に行ってみる?」
例のアパートは歩いて15分くらいの所にあり、酔いを覚ます口実に行くことになりました。
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時間は22時を回ったくらいだったと思います。
そのアパートには夜に来たことは無かったので目の前にするとより薄気味悪く感じました。
窓は全室に板を張られており、入り口は立ち入り禁止のバリケードがありました。
A「やっぱりここだよ。間違ってない。」
B「ここで合ってる。アパートの名前も合ってる。」
とにかく入ってみようとバリケードを乗り越え敷地内に入りました。
アパートの構造は三階建てで1つの階に1DKの3部屋、計9部屋の小さいアパートです。
壁には至る所に落書きがあり、よくある心霊スポットのような感じです。
どの部屋も鍵は壊されており入れる様になっていました。
まずは、1階の部屋を回ってみましたが特におかしな所は無く、残っている家財道具や打ち捨てられた粗大ゴミに何かしらのコメントを残しながら回って行きました。
2階も同じような感じです。AもBも埃っぽいだの、カビ臭いだの悪態を付きながらも回って行きました。
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そして、噂の3階へ。
よく、空気が変わると言いますが特に何もなく他の階と同様に301から探索をはじめました。
A「なんか新しいっぽいゴミが多いなー。よく人が来るのね。」
B「この雑誌なんて先月号だしなー。」
とか言いながら301号室の探索を終えようとした時です。
ガチャ…
近い場所で扉の音が聞こえた気がしました。
私とAは聞こえたみたいですがBには聞こえなかった様です。
A「別の肝試しグループじゃない?」
そんな呑気な事をAが言って、とりあえず部屋の外に出てみると、
302号室の扉が開いていました。
B「ヤバくね?」
これはヤバいかも。と私も思いましたが好奇心が勝りました。
そのまま三人で導かれるままに302号室へと入ってしまったのです。
ビクビクしながら入った割りにはやはり他と変わりはありませんでした。強いて言うなら他の部屋よりも片付いていたのが不自然でしたが。
入ったときには中に誰も居なかったので先に来ていた人が居たのだろうと推測しました。
ですが、変な感じがしました。
遂に、来るか…!と身構えた時、
「なぁ…」
私は驚いて飛び上がったのですが、声の正体はBでした。
B「なんか見られてる気がしない?」
Bは視線を感じて居るようでした。
A「さっきまで居た奴らが見て…」
とAが突然言葉を止めました。
Aの目線の先の『それ』に私も気がつきました。
部屋の隅に無かったはずの金髪の西洋人形が置かれていたのです。
A「動いた…」
突如Aが震えだし、その人形から目を離せずにいました。
私「マジ?」
そう言ってその人形近づこうとすると、
「触るな!」
人形がそう、怒鳴ったように見えました。
私達は奇声を上げながら一目散にその場から逃げ出しました。
そして、階段を降りきり、何故か私はそこで振り返ってしまったんです。
すると、
アパートの入り口に黒い影が西洋人形を抱き抱えていました。
私は大きく悲鳴を上げてそのままアパートには目もくれず走りました。
その後は三人で実家に戻り、神棚の前で身を寄せあって震えていました。
落ち着いてくるとAが話し始めました。
A「あの人形…俺に顔を向けてきたんだよ…ぐるっと首を回転させて…にらみつけられたと思ったら動けなくなって…アイツ、なんなんだよ…!」
私も黒い影の事を話しましたが、次のBの見た事が衝撃的でした。
B「あの人形、ずっと俺らを見てたよ。部屋に入る前から。俺、階段昇ったときに302号室の前に置かれてるの見て、不気味だとは思ってた…視線を感じるって言った後、俺も周りを見たんだ。」
そして、こう続けた。
B「あの人形歩いて俺らに近づいて来てたよ。ニヤニヤ笑いながら…」
Bのその言葉であの人形がケタケタ笑いながら近づいてくる様が鮮明に思い浮かんで背筋がゾクリとしました。
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その後、私達三人は何事もなく過ごしています。
そして、アパートも変わり無く存在しています。
多分、あの人形も…
作者仙葉
初投稿させて頂きます。
拙い文章かもしれませんがお付き合い頂けると幸いです。