家は早くに母を無くし、父が一人で生活を切り盛りしていた。
一人っ子の私を悲しませまいと、父はいつも笑っていた。
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私が小学校2年生の時の運動会でこけても、一人で大笑いしていた。
小学校の卒業式でも、私が証書を受け取る時にも笑っていた。
中学校の受験シーズンに入って、私が必死になって勉強している時も私を見てずっと笑っていた。
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「人が頑張ってるのに…」そう思いながらも、これは父なりの応援なのかな?と、考えていた。
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彼氏もできて高校生活を満喫していたある日。
父と些細な事で喧嘩になった。
(いつもみたいに笑って許してくれるだろう)
そう思って、
父がいつも身に付けているペンダントをこっそり取って、遊びに行った。
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帰ってきた時、父は今までに見たことのないような形相をしていた。
「早く返せ!!!」
父は大きな声で叫んだ。
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「そんなに怒らなくていいじゃん!」
暫くそんな会話が続いた。
父にキレていたが、
それより、この人はいったいどれだけ怒るのだろうという好奇心もあった。
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そこで私はペンダントを壊すことにした。
バキッ!
......
「父さんなんて知らない!!」私はそう言った。
どう返事がくるだろう。心の中はそれでいっぱいだった。
「出ていけ!」とか言われるかな?......
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だが、結果は予想とは大きく違っていた。
父は何も言わなかった。何も。......
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それから父は笑わなくなった。
いや、正確には少ししか笑わなくなった。
父は毎晩、11時ぴったりに笑いだし、0時にやめる。
その時間しか笑わなくなった。
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私は悲しかった。
父の笑顔が何か心に支えるものを作っていたのに、それを自分の意思で壊してしまった。
そう感じていた。
そして、悲しみと同時に恐怖があった。
いや、頭はほぼ恐怖で埋まっていた。
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深夜11時に聞こえてくる笑い声は自分の気も狂わせるんじゃないかと思う程怖かった。
友達の家に泊まりたかったが、
食事や洗濯、掃除はやらなければならないので行くことができなかった。
毎晩、恐怖と戦っていた。
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12月9日
今日は亡き母の誕生日であり、命日である。
父と仲直りをするなら今日だろう。
私はそう思い、母の花束を買いに行くついでに、父に渡すプレゼントを買いに行った。
仲直りしたらもしかしたら11時に笑いだすのもやめるんじゃないか?という期待があった。
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母の墓参りを終え、帰宅すると家の異変に気づいた。
「…は………はは…ははは。」
父が手に何かを持って床に座り込んで笑っていた。
なんでもう笑っているんだろう?少し考えた。
何か父の心が変わったのではないか。
そう思い、プレゼントを渡すことにした。
「父さん」
「はは、はははははっっははは」
返事はない。
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「父さん!」
「!??」
父が急に振り向いた。
その瞬間、手に持っているものが見えた。
それは、あの時私が壊したペンダントだった。
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父がこっちを向くと、ニヤァとした顔で見てきた。
すると、父がこっちに走り出してきた。
腕を凄い力で引っ張られ、そのまま外へ連れ出された。
父は止まらない。
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私はほぼ引きずられるような感じで引っ張られた。
「あぁ私、死ぬのかな?
あの時、あんなことしなきゃよかったな。」
私の中では、もうそんな事を考えていた。
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だいぶ引きずりまわされて、私が死ぬまで引きずられるのかな
、そう思った時、父は止まった。
体はアザと擦り傷だらけだった。
ここはどこだろう。
もう考えるのもめんどくさかった。
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けど、精一杯の力を込めて立ち上がった。
そして、ここがどこか、
今、目の前で何が起きているかが分かった。
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ここは墓地だった。
しかも母の墓がある墓地。
そこで父は笑っていた。
歩いて、母の墓の前で止まった。
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すると、父はうずくまって、こう言った。
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「久美、この娘(こ)はこんなに大きくなったんだよ。
これからも俺が笑って...笑って......はは、ははははははははは!!!」
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父は笑っていた。どこか悲しそうに...
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私は父の背中に抱きついた。
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そしてこう言った
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「やめて....もうやめて......
もう、これ以上......
これ以上泣かないで......」
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......
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目が覚めると、病院にいた。
ベッドの横には眠っている父の姿があった。
墓参り中に階段から落ちた。と、いうことになっているらしい。
生活は元に戻った。
父も元に戻り、11時に笑いだすこともなくなった。
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実はペンダントは母が死ぬ前に残したもので、受け取る時にこんな約束をしたらしい。
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「笑顔を...絶やさないでね。」
作者赤黒
いやぁ...疲れたwww
初の投稿。皆様の感想や、ご意見をお待ちしてます。
てか、読んでみたけど、まだ分かりにくいところや、読みにくい部分があって、初心者だなぁって感じ。これから頑張っていきまふ。
※作品に登場する久美は母の名前です。