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短編2
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ありきたり怪談

昨晩、自宅で会社の同僚と朝まで飲み明かしたAさんは、仕事も休みというのもあり、雨が降っているからと、娘を学校まで送る事にした。

後部座席には、どこか不機嫌そうちとな娘が座っている。

気まずさを感じたAさんは、娘に適当に話しかけた。

「昨日来てたおじさんな、パパの会社のお友達なんだよ。仕事で辛い事があったから話を聞いてくれってお願いされてな、仕方なく朝まで付き合ってやってたんだけど……ごめんな、もしかしてうるさくて眠れなかったか?」

バックミラー越しに娘の顔色を伺うAさん。

娘は相変わらず御機嫌斜めな様子で前を向いたまま黙っている。

軽く咳払いをし、Aさんは話を続ける。

「それにしても、あいついつの間に帰っちゃったんだろうな。パパ、1人でリビングで寝てたよ。起こしてくれればいいのにな、なあ?」

そこまで言ってAさんは再びバックミラーに目をやる。

すると、何やら娘の様子がおかしい。

さっきまで押し黙っていた時とは違い、目を見開き、口を鯉のようにパクパクさせて前を向いている。

娘の異常な事態に驚いたAさんは、思わず後ろを振り向いた。

その瞬間、

「えっ、何で……!? まだ帰ってないよ。お、おじさん、朝からずっと頭から血を流したまま、今もお父さんの横に座ってるよ……」

「えっ?」

──キキーッ!

突然、車の正面から激しいタイヤのスリップ音がした。

すぐに音の方にAさんが振り向くと、目の前にはAさんの車を避けようと、ハンドルを切った車両が目の前に。

──ガシャン!!

轟音を立てながら、二台の車は道路の真ん中で停止した。

辺りが騒然とし、野次馬が集まって来る中、Aさんの乗っていた、原型を留めていない車両の中から、携帯電話の呼び出し音だけが、虚しく響いていた。

後日談。

何とか一命を取り止めたAさんとその娘さん。

後にAさんに会社から、あの晩一緒に飲んでいた同僚が、朝方、自宅マンションから飛び降り自殺を計り、亡くなったとの知らせが、届いたという。

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