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【電車】
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私は、よく出張等で昼間にも電車を利用する。
昼間だと、利用する人間もほとんどいない。
事実、今も駅のホームで電車を待っているのは私一人だ。
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電車がやってきて停車する。
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電車の中も閑散としている。
客はスーツ姿の男たった一人しか乗っていないようで、その男も降りる為に私のいる側のドアの近くに立っている。
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見ればその男は、スーツはヨレヨレ、頬も痩せこけているが、それとは別に言葉に言い表すことの出来ない気持ち悪さがある。
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ドアが開くまでの間、私と男はドアを挟んで向かい合った状態になってしまう。
電車から降りたヘルメットの運転手と、この駅から運転するであろう運転手が確認事項を指摘しあっている。
その二人に対して、心の中で「早く開けろ…!」と何度も繰り返す。
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ドアが開く
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男は降りて、私は乗り込んだ。
すれ違いざま、男は私を見て、にやけた顔を覗かせた。
あぁ気持ち悪い!ゾッと寒気が走った。
作者パスヤマ
解説:
ヘルメットを被った運転手とは整備士。
電車は「車庫・整備工場」から出てきたばかりだったのだ。
車庫・整備工場に入る前に、運転手や車掌は車内を見回るし、整備している以上 客が閉じ込められていることに気付かないことはないだろう。
なにより、男自身が閉じ込められていたのにも関わらず落ち着き過ぎているのだ。
もしかすると…、男は私にしか見えていないのかもしれない…