中編3
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彼氏

これは、私が大学生の頃の話です。

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最初は、彼の精神状態がおかしいだけかと思っていたんですが、今思えば、何が悪いものに取り憑かれていたのかも知れません。

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彼とはテニスサークルで知り合いました。

テニスがあまり上手くない私、利き手も彼とは逆なんですが、一生懸命教えてくれる優しい人でした。

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その性格が故、頼まれたことはあまり断れない彼は、仲のいい友達が好きな心霊スポット巡りに付き合わされては、お祓いに行ったりお守りを買ったりしていました

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ある時、あまりにも具合が悪くなったからと、数日後にはお祓いに行く彼が、一度寝込んだのを境に面倒がり、お祓いに行かずに過ごした月がありました。

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私は心配になりお祓いをすすめましたが、寝込んだきり何もないから大丈夫だと言って聞きませんでした。

確かに、いつもと変わりないし、大丈夫だろう。

そう甘くみて、それ以上はすすめませんでした。

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ですがある日、彼から友人を心霊スポットに誘うようになりました。

今までは、気乗りしないと言いながらも参加していたし、後々のことを考えていた彼が。

自分から誘い、お祓いにも行かない日々が続き、ツイッターにも心霊スポットの写真を載せるようになりました。

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サークルにも顔を見せずに、友人と出かける回数が増え続けました。

ですが、それと同時に私への愛情表現も変わりました。

プレゼントやデート、サプライズまで増えて、彼と過ごす日々が楽しかったです。

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私は内気な性格で、綺麗でもなければ可愛くもないので恋愛経験もなし。

そんな私を愛してくれる彼がとても好きでした。

友人は、変わっていく彼を怖がり、別れた方がいいと何度も私に言いましたが、私は別れると言う考えはなかったです。

あくまでも、心霊スポット巡りは彼の趣味だと割り切ろうと考えていました。

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ですがある日、彼が私にこう聞きました。

「お前の携帯に、男、いるか?」

その瞬間、いつもと違う彼の口調に鳥肌がたちました。

口調だけでなく、何かが違う、何とははっきりわかりませんでしたが、違和感と恐怖に襲われました。

「いるか?…いるか?…いるか?」

同じ顔で同じ言葉を繰り返します。

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「イルカ?イルカ?イルカ?イルカ?イルカ?イルカ?イルカ?イルカ?」

「お前にあげたよな、ぬいぐるみ。あげたよな、ネックレス。あげたよな、指輪。」

私は怖くなって逃げ出しました。

彼の家を飛び出し、自分の家に帰りました。

同じアパートに住んでいる友人を呼び、すべてを話すと、言われました。

「だから、別れろって言ったのに。」

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彼女に言われて我に返りました。

彼はおかしかったんだ、と。

なぜ気づかなかったのだろう。

自然と涙が溢れました。

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その日の夜は友人と引越しの準備をしました。

場所を決めるまでは、友人が家に泊めてくれました。

彼からのプレゼントもすべて、捨てました。

すべてを忘れてしまいたい気分だったからです。

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荷造りをし、ゴミを袋にまとめた次の日、彼から電話がかかってきました。

「なぜプレゼントを捨てた?別れてもいいから、頼むからプレゼントは捨てないでくれ。せめて指輪だけは身につけてくれないか?12万もしたんだ。」

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てっきり私は、別れるのが嫌なのかと思っていました。

一緒に聞いていた友人はため息。

「あなたの友人に渡しておくよう頼むので、あなたが自分で身につけてください。」

そう一言いい、電話を切り着信拒否にしました。

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また次の日、友人が私の家にピンキーリングを落としたというので、探しに戻りました。

一通り探してもなかったので、嫌々でしたが、彼からのプレゼントを捨てた袋の中を調べることに。

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彼からのものと間違って捨てていたら申し訳ないと思った私は、焦って探していました。

ようやく見つけたリングは予想通り、彼がくれたもの。

真ん中の鉱石は、カメラレンズのように私を映していました。

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横からその指輪を覗き込んでいた彼女は、なんだか青ざめた顔でした。

声も出ないような表情で、ただ指輪を眺めるだけ。

その理由を知るのは、指輪が喋った言葉を聞いたあとでした。

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「君が身につけなきゃ意味が無いんだ。」

Concrete
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