短編2
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お爺さん

これは、私の兄が実際に体験した話です。

兄は理学療法士で病院に勤務しており、主に高齢者のリハビリを担当していました。

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私は当時高校生で、帰宅後、兄と会話をしていました。

兄は昔からバイクが大好きで、近いうちにバイクの免許を取りに行くことがわかりました。

そして次の日の朝、私は通学、兄は通勤で2人で朝食をとっていました。

すると兄が、昨晩見た夢について語りました。

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兄は夢の中でバイクに乗っていました。

山道をそこそこスピードを出して走っていたそうです。

そして、カーブに差し掛かったところで曲がりきれずにガードレールに接触し転倒、起き上がろうとすると右足の膝から下が無くなっていたらしいのです。

なんともリアルで鮮明に覚えているそうです。

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兄は、昨晩バイクの話したからバイクの夢見ちゃったよと苦笑していました。

そして、朝食後兄は職場へ行きました。

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その日も兄はいつも通り、病院のロビーでたくさんの高齢者の人に挨拶をしていました。

すると、ひとりのお爺さんが兄をじーっと見てるらしいのです。

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最初は気にしていなかったのですが、あまりにもじーっと視線をそらすことなく見てくるので、兄はそのお爺さんの近くに行き、先程からずっと僕のことを見てますけど、どうかされましたか?と、問いかけました。

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すると、お爺さんが一言 「お前、バイクには乗るんか?」

兄はバイク?と思いましたが、「近いうちにバイクの免許を取りに行こうと思ってるんですよ。」とお爺さんに伝えました。

すると、お爺さんは兄をじっと見つめたままこう言ったそうです。

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「お前、この先どんなことがあってもバイクには乗るな。お前がバイクで事故をして右足を失うのが見える。」と。

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兄はその夢の話は朝食の時に私にしか話していませんし、ましてや初対面のお爺さんが昨晩の夢の話など知ってるはずもありません。

そのお爺さんにその後兄が話しても、そのことについては一切語らなかったそうです。

そしてそのお爺さんは程なくして亡くなったそうです。

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あれから4年ほど経ちますが、兄はバイクの免許は持ってませんし、この先取るつもりも無いそうです。あのお爺さんの警告はこの先もずっと守っていくそうです。

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