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短編1
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エリーゼのために

子どもの頃私の周りの友達は

色んな習い事をしていた。

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私自身も書道や英会話など

一通り経験したものの

短い期間で辞めてしまったものだ。

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その中で唯一長く続けていたのは

ピアノだった。

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音楽を聞くのが好きだし

自分で演奏することが出来るように

なるのは嬉しい。

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けれど教えてくれる先生は

厳しかったのでレッスンに行くのは

あまり好きじゃなかった。

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そんな私を心配してなのか

日曜日に母がよく「エリーゼのために」を

家にあるピアノで弾いてくれた。

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当時の私はタイトルこそ

知らなかったが

聞いたことのあるいい曲だと思った。

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あれから10年以上たった今

ふと思い出して母に

「あの頃エリーゼのために

弾いてくれたけど

今もまだ弾ける??」と

何気なく聞いてみた。

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母は「何それ??」と笑っていたので

冗談かと思っていたが

しばらくして「誰かと勘違いしてるの??」と

言った。

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そんなはずない…あれは確かに

私の部屋のピアノだったし…

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music:4

でも鮮明にピアノを弾く手は

覚えているのに

演奏してるはずの母の表情が

思い出せない。

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あれは一体誰だったんだろう。

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