清々しい快晴の、ある日。
私は気分転換に、辺りを散歩していました。
お財布とスマホ、そして賞味期限が近い飴を鞄に入れ、辺りを散策していました。
30分程歩き、口元が寂しくなってきたので、鞄に入れていた飴を1つ取り出し、口に放り込みました。
口の中に広がる、フルーティーな甘さを楽しみながら、口内で飴を転がします。
そうしながら歩いていると、
「あははは」
「きゃはははは」
と、笑いながら5人の子供達が、私の前を横切りました。
幼稚園の高学年ぐらいだろうか、背丈は皆、同じぐらいで、同級生の友達同士のように感じられました。
そして、その中の1人に、私の目は釘付けになりました。
今時の、可愛らしい服を着た、男女4人を追いかけるように、走っていった1人の女の子は、可愛らしいピンク色の着物を着ていました。
「着物が好きなのかな。それとも親の影響なのかな」
と、考えている内に、子供達は近くの公園へ、走って行ってしまいました。
辺りを見回すと、少し離れた所で、子供達の母親らしき4人の女性が、談笑していました。
母親の中に、着物を着た人はいなかったので、
「子供の方の趣味なのかな。今時、古風だな」
と、勝手に思い、私は歩き出しました。
暫く歩くと、私の後ろから、
「お姉ちゃん」
と、女の子の呼ぶ声が聞こえました。
「ん?」
と、反射的に反応し、振り返ると、先程の着物の女の子が立っていました。
子供らしい無邪気な笑顔を浮かべ、
「それ、ちょうだい」
と言い、私を指差しました。
私の口の中には、今だに飴が入っていました。
「口をモゴモゴ動かしている私を見て、お菓子を貰いにきたのだろうか」
そう思った私は、
「ちょっと、待ってね」
と声をかけ、飴が入っている鞄に手を伸ばしました。
すると、
「違うよ。そっちじゃない」
と、女の子は言い、さらに私を指差しました。
「飴以外、渡せるものないのにな」
と、私は困りながらも、女の子が指差す場所を目で追いました。
口元を指差していると思っていましたが、よく見てみると、女の子の指先は私の口元よりも下を指していました。
私の胸元の、丁度心臓がある辺りを指している事に気づいた時、
「ちょうだい」
子供とは思えない程、低い声で言われました。
条件反射で向きを変えた私は、全速力で逃げました。
自宅に駆け込み、玄関で乱れた息を整えました。
着物の女の子は、ついてきてはいませんでしたが、女の子の低い声が、暫く頭の中で響いていました。
作者セラ
短めな話を書こうと頑張ってみました。
毎回ですが、誤字、脱字あったら、ごめんなさいm(__)m