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中編5
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夢の話

これは最近見た怖い夢の話です。

一部に残酷な描写が含まれております。

苦手な方はお戻り下さい。

~~~

暗い雪道を二人の女性が歩いている。

一人は長い髪を後ろで束ねた、ポニーテールが特徴的な女性。

明るく活発的な印象で、想像通り、主にこの人が話役になっている。

先ほどから身振り手振りを交えながら、笑顔で話を続けている。

こちらはAさんと呼ぶ。

そして、もう一人は先ほどとは正反対の女性。

肩につくか、つかないかの短い髪。

大人しそうな印象で、この人は主に聞き役になっていた。

Aさんの話を微笑みながら聞き、相づちを打ったり、たまに意見を言ったりしている。

こちらはBさんと呼ぶことにする。

二人は遊んだ帰りらしく、Bさんの地元で遊んだAさんを駅に送っている最中らしい。

二人は話し合いながら、駅への道を歩いていく。

すると、視界の先にコンビニが見え始め、ここで今まで聞き役だったBさんが話始めた。

B「あそこのコンビニのお惣菜、すごく美味しいんだよ」

A「そうなんだ。まだ電車まで時間あるし、買って食べない?」

Bさんは笑顔で頷き、二人はコンビニに入った。

二人は美味しそうなお惣菜を買うと、それを食べながら、再び駅へと向かった。

A「本当に美味しい」

そう言いながらAさんは、出来立てのお惣菜を次々と食べていく。

B「Aに気に入ってもらえて、よかった」

そう言いBさんも食べようとした時、前方の十字路が視界に入った。

視線を外そうとしたものの、何故だか気になって、ついじっと見つめていた。

真っ白の雪なのに、十字路の中心だけが赤黒くなっていた。

さらに見つめると、その上で何かが動いている。

その正体に気づいた時、Bさんは軽く悲鳴をあげ、目を背けた。

Bさんの悲鳴に気付き、お惣菜から視線をあげたAさんも、何事かを聞く前に、十字路にあるものを見つけ、Bさんが悲鳴をあげた理由を理解した。

十字路には車に轢かれた猫がいた。

まだ意識はあるらしく、動かない体をもぞもぞと動かしながら、必死に鳴いていた。

目を反らしていたBさんは、Aさんが動く気配に視線をあげた。

Aさんは猫がいる十字路に向けて、歩いていた。

Bさんは止めようと、声をかけたが、Aさんは、

A「大丈夫」

と言い、進んでいった。

Bさんは少し離れた場所から、見ている事しか出来なかった。

Aさんは猫に辿り着くと、

A「苦しかったね、もう大丈夫だよ」

と声をかけた。

猫は必死に鳴いていた。

そっと伸ばされたAさんの両手が、猫の首に掛かった。

力を込めるAさん。

猫の鳴き声は呻き声のようなものに変わった。

だが、次第に声は薄れ、もぞもぞと動いていた猫は遂に、動かなくなった。

動かなくなった猫の頭を撫で、Aさんは微笑んでいた。

暫く放心状態で見つめていたBさんは、車のクラクションで我に帰った。

Aさんに向かい、一台のトラックが走ってきていた。

この辺りは暗く、運転手がAさんに気づいた時には、もうすぐそこだった。

クラクションを鳴らし、ブレーキを踏む。

しかし、道路は雪により凍結していた。

止まれずトラックはAさんを轢いた。

Bさんは慌てて、Aさんの所に向かった。

そして血だらけのAさんを前に、言葉を失った。

頭から血を流し、身体は変な方向に折れ曲がっていた。

一目見て、助からないと分かった。

さらに不幸な事に、Aさんにはまだ意識があるらしい。

時折、呻き声のようなものが聞こえた。

うつ伏せに倒れていたAさんが、視線に気づいたのだろう、Bさんを見つめた。

そして折れ曲がった腕を、もぞもぞと動かしながら、

A「た…すけ…」

Bさんは言葉を聞き終える前に、その場を駆け出した。

走って、走って、気がつくと、我が家に戻ってきていた。

家に入ると、母は料理を作っていた。

父はテレビを見ながら、あれこれ母に話していた。

母が「お帰り」とBさんに声をかけた時、Bさんの中で堪えていたものが溢れだした。

Bさんはその場で泣き崩れた。

いきなり泣き出したBさんに驚き、母と父が駆けつけた。

泣きながらBさんは、さっきの出来事を話した。

心配していた母と父の顔色が変わっていった。

話を聞き終えると父は家を飛び出していった。

母はBさんの側に寄り添っていた。

泣き疲れたのかBさんはいつの間にか眠っていた。

翌朝。

目を覚ますと心配そうな母と父が側にいた。

「落ち着いたら、読みなさい」

と父は新聞を置き、部屋を出ていった。

新聞を見ると、昨日楽しく遊んだ友人の顔写真と名前、そして「死亡」の文字が目に入った。

辛く、悲しいはずなのに、涙は出なかった。

翌日。

新聞記者の人が家に来た。

母と父はBさんを心配し、追い返そうとしたが、Bさんは話せる事は話したいと思い、家に上げた。

「どうしてAさんは車道に居たのですか」

B「傷ついた猫を助けようとしたんです。心の優しい人だったので。」

「Aさんはどのような人でしたか」

B「明るく、活発的な人でした。勉強も部活も出来て、いろんな賞を取っていました。こんな私とも仲良くしてくれて、Aさんは誰にでも優しい人でした。だからAさんはいつも、皆の輪の中心にいるような人で、皆からも慕われていました。」

簡単な事を幾つか質問した後、感謝とお悔やみを言い、記者は帰った。

さらに翌日。

新聞にはAさんの事が書かれていた。

Bさんが証言した事も、もちろん書かれていた。

新聞に書かれた記事を指でなぞりながら、BさんはAさんを思った。

B「Aは明るい人だった。私とは正反対。私は大人しかった」

B「活発なAはいろいろな事に挑戦した。そして賞を貰えば、周りはAを尊敬し、誉めた。私はただAを見つめ、誉めていた。ずっとそんな時が続くと思っていた」

B「そんなある時、貴方は言ってくれた。一緒に何かをやろうって。輪の外に居た私が、輪の中心になれるチャンスだった」

B「貴方は気づいていたの?私が心の中では、目立ちたいって思っていたこと。だから声をかけてくれたの?」

B「貴方がどう思っていようが、私はとても嬉しかった。すぐにでも何かをやりたかった。でも、私の性格が邪魔をした。私は断ってしまった」

B「私は輪の外に戻った。貴方は輪の中心にいた。いつも、いつも…」

気がつくとBさんは高層ビルの屋上にいた。

眼下には小さい人や車が微かに蠢いていた。

B「あの時、Aと一緒に車道に出ていたら、私も貴方の隣に居たのかな?ごめんね…一人で寂しかったよね。今度は断らないから、次こそは二人一緒にやろう。明日には私は貴方の隣にいて、一緒に皆の注目を浴びるの。」

B「待ってて…今、逝くから…」

そう言いBさんは、一歩前に踏み出した。

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