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中編3
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夢見る少女

少女は夢見ていた。

いつかこの劣悪な環境から自身を救い出してくれる、白馬の王子が現れることを。

少女は夢見ていた。

いつか酒浸りの暴力だけが自慢のこの醜悪な両親が、裁きを受けることを。

しかし、現実というものは常に非情である。

どれだけ少女が夢見、願い、祈っても、神はこの哀れな少女を救ってはくれなかった。

「あぁ、神よ・・・!どうしてなのですか、私の願いをどうして叶えてはくださらないのですか!!」

少女は自身の身の上を嘆き、悲しんだ。

しかし少女はいつか願いが届くことを信じ、それからも毎夜、神に祈りを捧げたのである。

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そして少女が17の年を迎えた時、ようやく神は少女の眼前にその姿を現したのである。

「まぁ・・・!なんて神々しいのかしら・・・、貴方様が私の願いをお聞きに・・・?」

「そうだとも。・・・しかし、そなたの願いを聞き届けることはできぬ」

少女は神の残酷ともいえる返答に、ただただ心を痛めるばかりだった。

「なぜ・・・なぜなのですか、神よ!!私はもう十分に不幸な目にあってきました!それだというのに、まだ幸せを望んではいけないというのですか!?」

「不幸な目と、そなたはおっしゃるのか?」

「えぇ、そうです!両親からは暴力を振られる毎日!!愛なんて知らずに、ただ貴方様にだけの祈りを支えに、私はこれまで生きてきたのですよ!!」

「しかし、それでもそなたの願いを聞き届けることはできぬ」

ただ一言、神はそう告げると少女の前からやがてその姿を消した。

「あぁっ!!私は、私は・・・!!」

後に残ったのは、絶望に打ちひしがれる哀れな少女の姿だけであった。

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神は恐れていた。

劣悪な環境に生まれ、親からの愛情を知らず、自身を助け出してくれる王子を待つ少女のことを。

神は恐れていた。

それが全て、少女の妄言であることを知っていることを。

少女は誰よりも幸せであった。

親からの愛を目一杯に受け、何の不自由もなく生きてきた。

しかし少女はそのような何の不満もない生活に、次第に飽きを見出し始めていた。

そして自身は愛を知らない哀れな身の上、などといった妄言をはやし立て、そうした自身に酔っていたのである。

「いやはや・・・人間というものは真に恐ろしい生き物だ。神であるこの私が何も知らないとでも思っていたか。・・・しかし、私が何も知らなかったとしたら、一体何を望んでいたのか・・・・・・」

神は天上から少女を見下ろしながら、その澱んだ眼にぶるりと震えを覚えた。

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ぐいっ、と涙に濡れた頬を乱雑に手で拭うと、少女は神のいる天上に憎々しげな目を向ける。

「次はどうしようかしら・・・。父様と母様に恨みはないけれど、一度見てみたいのよ。暖かな人間の中身を」

ニヤリと笑みを浮かべるその姿は、もう人間と呼んでいいのかと思ってしまうほどに醜悪そのものだった。

「あとはそうね・・・、向かいの家の彼にもお近づきになりたいわ!けれど私は美しくなんてないから、隣の彼女の顔の皮でも剥いでしまおうかしら、えぇそれがいいわ!彼女の皮だったら、きっと彼も喜んでくれるわ!」

夜の冷たい風が少女を撫でていく。

だが、少女の体の熱が冷めることは決してない。

「だから女の私にでもそんなことができるような力が欲しかったのだけど・・・やっぱり、神はダメね。何でもお見通しだったもの」

バタン、とバルコニーの扉を閉め、ベッドに潜り込んだ少女は笑った。

「次は悪魔でも呼ぼうかしら。きっと退屈しない毎日になるわ!」

少女の目はまるで玩具を見つけた子供のように、キラキラと輝いていた。

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