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最終章   お狐様と回顧録

長編18
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最終章   お狐様と回顧録

この話の最終章になります

いよいよ3日目の夜になり

オハルちゃんたちが元の時代へ帰る時間が刻々と迫ってきました

果たしてオハルちゃんたち4人組が「いい夢」を感じてくれたかどうか

怪しいのですが・・・・

<<よく私のいいつけを守ってくれました、この子たちの笑顔を見させてもらった。もうそろそろ時間です。この子たちを元の時代へ戻す・・・>>

お狐様の声が響いてきた

「あ!お狐様、ちょっと待って・・・この子たちにいろいろと渡したいものがあります、時間を下さい」

<<なるべく早くしてくださいね、この時間内に戻れないと大変なことになりますから>>

私たちは1か月分の食糧と写真などをもっていってもらえるようにお狐様に頼んだ

<<確かに預かりました、食糧はなるべく少なめに渡しますね、あの家族たちが1日でも長生きできるように、よく約束を守ってくれました、感謝します、でわ子供たちを元の時代へ返しますね・・・>>

「お狐様・・・・」

子供たちは静かに消えていった

残ったのは布団だけ

食糧と写真も消えた

「行っちゃったね・・・もう2度と会えないんだね・・・さびしい」

「だな・・・もう1日いてほしかった」

「おっちーーー、もっといろいろなところに連れていきたかったぞぉーー」

「これが運命だよ・・・」

「わしゃ・・・オハル大おばさまには会えた・・・まさか・・年を取ったオハル大おばさまと小っちゃいオハル大おばさんにも会えるとは夢にも思わなかった・・・長生きしてよかった・・・これも仏さまやお狐様のおかげじゃで」と大おばさまは大泣きした

倉庫へ行っていた住職の奥さんが何やら箱を手にもって戻ってきた

「あ・・・子供たち・・・・元の時代へ戻っていったんだね・・・さびしいねぇ・・・」と

住職の奥さんは落胆していた

「ああ・・・あっ、そうだわ、あったわよ、たしか「オハル・オアキ回顧録」という日記みたいなものを私がここへ嫁いだ時に先代の住職様からこの日記帳を見せられたのを思い出したのよ。なんでも2代前の住職がオハル・オアキ姉妹の不思議な話をこの日記帳に記したとか」

と確かに「オアキ・オハル回顧録」という日記帳みたいなものをみるとたしかに不思議な話が載せてあった

この回顧録を読むとどうやらオアキ・オハルちゃんたちは両親と兄2人の死別後、親戚中をたらいまわしにされて最終的にはこのお寺の養女としてオアキちゃんが25歳までオハルちゃんが20歳までこのお寺で暮らしたと書いてあった

「おっちーー!ちょっとまって生き残ったのはオハルちゃん一人だと思ってたけどオアキちゃんも生きてたんだ、そっかーー、でも・・・タロウ兄ちゃんジロウ兄ちゃんはやはり病死なのかな・・・かわいそすぎるぞぉーーー」

「えっーーと、タロウ兄ちゃんやジロウ兄ちゃんのことも書いてあるのよ、病死ではなく・・・やはり飢えからくる栄養失調で死んだと書いてある、両親も子供たちを優先にしてほとんど食事をとってなかったと書いてあるね、えーーと、そっか・・・兄2人も妹たちだけでも生き残ってほしいのか食糧をオアキ・オハルちゃんたちに渡していたみたい」

「おっちーーー、かわいそすぎる・・・やはり1か月分の食糧だけでは足りないのかな・・・」

「まぁ・・・親戚の人がたまたまオハルちゃんの家に用事があって家の中に入ったときには両親と兄2人はもう息をしていなかった書いてある。

オアキ・オハルちゃんは息が絶え絶えになってるところを発見した、と書いてあるわね、それからオアキちゃんが10歳まで親戚中をたらいまわしにされてその年の秋にこのお寺に養女として迎えられた、と書いてある。オハルちゃんも11歳まで親戚中をたらいまわされてその年の春にこのお寺の養女として迎え入れた、と書いてある」

「うん・・・そっか・・・親戚中をね・・・かわいそうに・・・家族を失った者の典型的なパターンだ」

「オハルおばあちゃんオアキおばあちゃんたち・・・かわいそすぎる」

「でも・・・どうしてオアキ・オハルちゃんたちはここのお寺の養女として住職は迎えたの?おっちーー、気になるぞぉ」

「え・・と、あった、回顧録ではどうやら住職が寝てるときに枕元にキツネみたいな

親子が立っていて住職にオアキ・オハルという姉妹をそれぞれの方角を言うから探せ、と告げられたみたいだね、オアキちゃんが東の方向にいる、オハルちゃんが南の方向にいるから見つけ出して必ず養女にせよ、といわれたみたいだね」

「えーー!!まさか、お狐様かな・・・・」

「目を覚ましてからまずは東のオアキちゃんを探しに東の位置にある家を全部探した、と書いてある

毎日探した、と書いてあるわよ。そして3か月後にやっとオアキという名前の幼女を見つけた、と書いてある。親戚中から嫌われてあちこちたらい回しにされた、と書いてある」

「おっちーーー、たしかにオアキちゃんは人見知りが激しくて大人しい子だよ、でもいい子だよ、なんでたらいまわしにしたんだよ、ひどすぎるぞぉーー」

「どうやら・・・その人見知りが原因だったみたい・・・なかなか家の人になつかずにいつも泣いていた、書いてある。・・・・家のお手伝いもしなかったと書いてあるわね」

「うううう・・・オアキちゃん・・・」

「その次にオハルちゃんを住職は南の方向の家を全部探したと書いてある。これも3か月後にオハルという名の幼女がいるということで住職は養女にした、と書いてある。オアキ・オハル姉妹はこのお寺で再会して二人とも歓喜して大泣きしたと書いてあるわね」

「オハルちゃんも親戚中をたらいまわしにされた、とこの回顧録では書いてある。」

「おっちーー」という口癖が家の人には理解されずかつ不思議な話をするものだから不気味がられていた、と書いてあるわね」

「おっちーーー、私も小学校まで「おっちーー」という口癖でお友達が一人も出来なかった。だから私の友達はF子ちゃんだけだった。Fアニキもお友達だけどね。中学校の時にはじめてお友達が出来たんだ」

「そうだったの、S子ちゃん、よくがんばったね」と住職の奥さんがほめてくれた

「不思議な話ってどんな話ですかね」とS君は尋ねた

「えーーと、この回顧録では見知らない大きなお兄ちゃんと大きなお姉ちゃんが突然来て

いろいろな場所に連れて行ってもらったとかおいしいものを食べさせてくれた、と家の人に話をしたのだが

家の人は単にそれは「夢」の話だろうということでオハルちゃんの話をしまいには無視するようになったと書いてある」

「おっちーーー、・・・オハルちゃん・・・私たちと3日間一緒にいたことをちゃんと覚えていてくれた・・うれしい、でも・・・それが原因でたらいまわしにされたんだね・・・なんか・・私たち余計なことをしたような気がするぞぉ・・・アニキたち」

「いや、S子それは違うぞ、俺たちだってお狐様の言うとおりにして子供たちは喜んでいた。決して余計なことはしてないはずだ」

「幼女にした住職はオアキ・オハルちゃんたちに読み書きとものの数え方を教えようとしたけれど

住職がひらがなの「あ」を紙に書いた時にオアキ・オハルちゃんが大きな声で「あ」と発音したために住職が仰天したと書いてあるわ」

「えええ!!!、まぁ今の住職さんが教えたからね、やることが一緒だ」

「それで住職はものの数え方もおしえようとしたけれどこれもちゃんと理解していた、と書いてある。九九も教えようとしたが九九も完全に理解していたので住職は仰天した、と書いてあるわね。

それでこの姉妹にどこで習ったのかと聞いたそうだが姉妹はここのお寺の名前をいったものだからまた住職は仰天した、と書いてある。住職はいくら思い出そうとしたけれどこの姉妹に教えたことはないはず、でも姉妹はこのお寺の和尚に教えられた、とますます住職は訳が分からずしばらく考え込んだ、と書いてある」

「だな・・・まさか未来の和尚に教えられていたとはおもわないもんな」

「住職はオハルちゃんが不思議な話をする娘と聞いていたから興味をもったみたいだわね。

住職がその「夢」についていろいろと聞いたみたい。するとオハルちゃんは「クルマ、ジドウハンバイキ、コンビニ、アイスクリーム」など住職も一度も聞いたことが無い言葉に理解することが出来なかったと書いてある」

「オハルちゃん・・・全部覚えてる・・・すごい・・・」

「ああ!わしゃがオハル大おばさまの膝の上でそういう不思議な話を聞いたことがある、小さい時は大おばさまのたわ言かとおもってた、でも・・今はそれがすべて現実のお話だったんだ・・・オハル大おばさまに失礼なことをした・・・わしゃ・・・後悔してる・・・」と大おばさまはしばらく下を向いたままだった

箱の中にはいろいろなものが入っていた

「え!・・・これ、俺が写してプリンターで印刷したものだよ、ほら全員集合して記念撮影したろ、

色は変色してるけど・・・」

「あああ、これはお守りだぁ、オアキちゃんとオハルちゃんのだ・・・」

「これって今さっきお狐様にもっててもらったものだよ」

「そっか・・・オアキ・オハルちゃんたちはこのお寺の養女となっていたんだ・・・」

「そういうことなのかな・・・はじめてこのお寺に来たときになんか懐かしい気がした。私、人見知りが激しいから知らない人との会話は大の苦手、

でもここの住職さんや住職の奥さんはなぜか以前にお話ししたような感覚に陥って自然とお話が出来た。私、オアキちゃんの生まれ変わりだと思うから、人見知りが激しいところは同じだからね」

「俺もそういう感じ、初めて来たところじゃないと思ってた、なにか懐かしいというノスタルジックな感覚に襲われたよ」

「おっちーーー、私は水ようかんを見て以前食べたような気がしたから、それとこのお寺の間取りもなぜかわかった。不思議だなと思ってた」

「S子・・・・おまえ・・・食べ物を見て懐かしいのを思い出したのかよ、もうちょっとロマンのあるもので思い出してほしかったな」

「Fアニキよ・・・それは無理だぞぉーー、私、水ようかんが大好きだから」

箱の中にはまだいろいろなものが入っていた

「お!!!、なんでF子が写ってるんだ?すごい美人さん」

「どれどれ・・・???・・・よく似てるけど俺の妹じゃない気がするけどな」

「アニキたち、見せて・・・あ!私、・・・でも服装が全然違う、写ってる方(かた)のほうが端正で綺麗だよ、凛としてる」

「たしかに・・・F子に似てるけど・・・F子も美人だけど、この写ってる女性の方が凛としてるね」

「おっちーーー、私にも見せて、お!F子ちゃんだぞぉーー、

・・・でもなんか元気がないというか覇気がないね、たしかに顔たちは凛として端正、・・・・写真の裏は・・・・あああ!!!!、わかったぞぉーー、この写ってる女子はオアキちゃんだ、えーーと、「オアキ21歳」と書いてあるぞぉー」

「ええ!オアキちゃんか・・・納得した、オアキちゃんなら間違いなく大きくなったら美人になると思ってた」

「俺もだ、小っちゃいオアキちゃんの顔たちは幼少ながらも顔たちが整ってたもんな、これ、オアキちゃんがタロウ兄ちゃんに冷やし中華の食べ方を教えていたと時の写した写真、まじめにタロウ兄ちゃんから教わってるときの顔とこの19歳の時の顔、ほとんど同じ、俺、写した時に絶対にオアキちゃんは大きくなったら美人になるな、と確信したからな」

「私もこういう言い方は・・私の幼い時とよく似てたから・・・もしかしたら・・・私のような顔たちになるのかなと思ってた」

「ところでなんで寂しげな顔をして写ってるんだろうね?」

「ちょっとまってね・・・えーーと、もしかしてこれなのかな?

オハルちゃんが20歳の時に結婚してこのお寺から出て行った、と書いてある。もしかしたらこれが原因かもしれないね」と住職の奥さんは回顧録に書いてある文章を読んだ

「おっちーーー、大おばさま、20歳の時に結婚をしたんだね、たしか子供は6人産んでるはずだよ、その子供の中の一人がわしゃたちの一族だよ」と大おばさまが思い出したように割り込んできた

「ああ・・・オアキちゃん一人になったんだ・・お話相手がいなくなっちゃった、それで寂しそうな顔をして写ってるんだ」

「オアキちゃんって・・・死ぬまで一人だったのかな?」

「えーーとまってね、あった!オアキちゃんは25歳の時に京都の財閥の息子さんと結婚してるわね、この回顧録によると財閥の息子さんと父親がこのお寺にはじめて来たときに息子さんがオアキちゃんを見て一目ぼれをした、と書いてある。

何度かお付き合いの申し込みをしたみたいだけどオアキちゃんが断ってたみたいだね。でもオハルちゃんの一声でオアキちゃんも付き合いをOKしたみたい。そのあとは順調にお付き合いをしてオアキちゃんが25歳の時に結婚をしてるわね。

えーーと、そのあとに男の子を一人産んでるね。・・・ええ!!!・・・ちょっと待って・・・これは・・・オアキちゃん・・・まさか・・・みんなよく聞いてね、オアキちゃんが35歳の時に不慮の事故で亡くなってる」

「ええええ!!!---そんな・・・35歳は短すぎる、美人薄命ってこういうことを言うんだな」

「事故ってどんな事故なんだろう」

「えーーと・・・書いてないね、書いてないということはあんましよくない死に方だと思う、息子さんも一緒に亡くなってるようだし、亡くなった場所が池のあたりだと書いてある。まさか・・・ねぇ」

「気になるね、私もあんまし良くない死に方だと思う」

「えーーと・・・うん・・・はぁ・・・どうやらね経営があんましよくなかったみたいでオアキちゃんが32歳の時に離婚されてる。一度はここのお寺に身を寄せたみたいだけどね、

でも女子一人で子育ては厳しい時代だったからね、オハルちゃんも何とかオアキちゃんを助けようとしたみたい。でもオアキちゃん、病気にかかってたみたいだね、オハルちゃんがオアキちゃんの息子さんを養子としてもらおうと相談してたようだけどオアキちゃんが拒否したみたい。これが原因なのかな・・・」

「だとおもいます。せめて息子さんだけでもオハルちゃんに預けていればね」

「おっちーーー・・・ううーーー、まさかねぇ・・・アニキたちよ、お狐様ってオアキちゃん親子じゃないの?」

「あ!そうかもしれない」

「わたしも前々から他人様のような気はしてなかった、なんとなくオアキちゃんのしゃべり方にそっくりだったから」

「そっかぁ・・・オハルちゃんはいくつまで生きてたの?」

「えーーーと、オハルちゃんは90歳まで老衰で亡くなってるね。長生きしたんだね」

「わしゃ・・・学徒疎開しててそれ以来オハル大おばさまとは会っていなかった。気にはしてたけど生活に追われてていつのまにか忘れていた。そっかぁ・・・大おばさまは90歳まで・・・わしゃも長生きしないと大おばさまに笑われそうだ」

「えーーと、お墓はやはりこのお寺にあるね。なるほど・・・あそこね」

「オアキ・オハルちゃん達揃ってこのお寺の一番静かな場所にお墓がある、全然気づかなかったわ」

「場所って?どこですか?」

「えーーとね、ほら・・・ここの庭の奥にあるのよ」

「今からでも見に行きましょうか」と住職の奥さんは私たちを案内してくれた

懐中電灯を手に持ち日本庭園の横の道を通りこのお寺の奥に松林で囲まれた一画があるところまで案内された

たしかに静かな場所だと思う

お墓自体は豪華さはない普通のお墓

ただその一画だけは特別に手入れがしてあった

「前の住職様から毎日朝に必ず線香と水を置くように、といわれてたけれどまさかオアキ・オハルちゃん姉妹の墓だとは知らなかったわ、なんで毎日線香と水を置くんだろうと思ってた。ここで眠ってたんだね」

「知らない場所でお墓を建てられてもあまりうれしくないもんね、ここなら安心してオアキ・オハルちゃん姉妹は眠っていられるね、おしゃべりもできるし」

「おっちーーー、ここなら、安心だぞぉーーー」

「でも・・・タロウ兄ちゃんやジロウ兄ちゃんや両親のお墓はどこなの?」

「えーー、と、ううう・・・無縁仏として・・このお寺のどこかに埋めた、と書いてあるだけ」

「え!、無縁仏・・・そんな・・・じゃあ、オアキ・オハルちゃん達、お兄ちゃんたちと会えないじゃない」

「両親もね」

「おっちーーー、かわいそう・・・おっち、そういうことかぁ・・アニキたちよ、やっとわかったぞぉ、オハルちゃん達、お兄ちゃんと両親の無縁仏の場所を探してほしいと私たちに頼ってきたんだよ」

「たしかに、S子の言う通りかもしれないな、オハルちゃん達お兄ちゃんや両親に会えないんだ、無縁仏では探したくても住む場所というか次元が違うのかもな」

ようやくこの一連の現象がわかった

オハル・オアキ姉妹たちは兄と両親に会いたいのだと

だけど兄と両親は無縁仏として葬られたから会えないんだと

私たちは一旦お寺へ戻った

とにかく兄と両親の無縁仏の場所をまず探すことにした

しかし、無縁仏の墓に名前など書いてはいない

どうやって探すんだ

和尚に聞くと無縁仏のお墓は全部で20

それも場所がバラバラに建ててあるとのこと

「おっちーーー、まず無縁仏を一つの場所に集めることはできないの?」

「まぁ・・・できないことはないけれど・・」と住職は少し口を濁した

「ひとつひとつ、無縁仏のお墓の中を調べてみようよ」

「オハルちゃんたちにほらお守りを渡したでしょ、もし大事にそのお守りを持っていれば誰なのか分かると思う」

「なるほど・・・昔は土葬だったから・・わかるかも」

「うむ、明日業者を呼ぶわ」

「ありがとう和尚様、あとはその移転先の場所をどこにするかだな」

「オハルちゃん達との関係のない無縁仏は・・・うーーん、南側の松林を取り除いてあそこへたてられないですか?」

「できないことはないけれど・・・」

「あそこならちょうど小川や砂利道が見えてもしかしたら無縁仏の縁者が通るかもしれない、通ったら無縁仏の中からなにかしら行動を起こす無縁仏達がいるかもしれない」

「なら・・・オハル・オアキ姉妹のお墓も南側の方へ建て直せばいいと思う、あそこなら田んぼや畑や小川が良く見えるし」

「わかりました・・・明日、業者を呼びます、打ち合わせは業者を含めて話し合いしましょう」

住職は快く快諾してくれた

あとは兄と両親を見つけるだけ

恐らく見つかると思う

夜もだいぶ更けた

時計を見ると午前1時

山風の冷たい気持ちの良い風が吹いている

ふと見ると山頂の神社の明かりがなんとなくまぶしく見えた

ふと・・・思った・・あの神社を建てたのは誰だろうと

そうおもいながら疲れのためか眠ってしまった

朝6時ごろ周りの声が騒がしくなって目が覚めた

業者たちは朝9時頃に来るという話

警察官一人を呼ぶそうだ

今日も蒸し暑い日になりそう

朝食を終え

それぞれ用事をしはじめた

S君はもちろんカメラの掃除と点検

どれだけの枚数を撮ったのだろうか

私は軒先で庭園を見ていた

無駄のない配置

見るものを癒す

朝・昼・夜と表情を変える

特に夜の庭園は光と影のコントラストがとても美しい

月の夜の晩だと一層美しく見えるのだそうだ

この仏間に泊まるお客さんが多いとのこと

仏間から見る庭園は世間の騒がしさを吹き飛ばし静寂の世界へ誘うとして予約で埋まってるということだ

基本的に一日一家族だけの予約制だ

ここの予約は1年前から予約しないと無理ということですごく評判がいいとのこと

なんでもある女子のアイデアではじめたらしい

はじめたころは大盛況で大いに盛り上がったんだそうだ

住職の奥さんがそう話していた

もうそろそろ業者たちが来る時間だ

仏間の掃除を終え冷たいお茶を用意した

業者と駐在所の警官が来た

総勢30人

和尚の挨拶から始まりどんなふうに計画を立て実行していくか議論した

1時間の話し合いでおおよその計画を立てた

まずは無縁仏のお墓の中をひとつひとつあけ身元の照合をはじめるとのこと

警官立ち合いの元、ひとつめの無縁仏のお墓を開けた

それを20個分作業をした

お昼までの作業になってしまった

兄と両親のお墓が見つかった

やはりちゃんと首からおまもりをかけていた

お守りの中身を確認をした

だいぶ字がすれていたが間違いなく兄と両親の名前が書いてあった

昼食を済まし

午後1時から今度は南側の樹林を伐採することになった

横20メートル分の樹林を伐採した

伐採した部分を平らにしまずはオハルちゃん一家の骨を横に順に並べて埋めた

その上にあのお墓を建てた

あとの無縁仏達はオハル一家のお墓の左右に並べた

ここからなら遠くは幹線道路が見え、田んぼ・畑が良く見えて

小川もよくみえる、お寺まで通じる砂利道もよくみえる

この作業でもう夕方になってしまった

和尚がお経をあげ供養をした

作業も無事に終え業者たちに土産を持たせて帰ってもらった

何とか無事に終えたので和尚は喜んでいた

仏間からでもオハルちゃん一家のお墓が良く見える

私たちは夕食をしながら庭園とお墓を見ながらおしゃべりをした

「これでオハルちゃんたち、家族全員会えたと思う」

「おっちーーー、家族全員あえたんだぞぉーー」

「あそこなら両親も安心して田んぼ仕事や畑仕事が出来るね、小川で水遊びもできるし

オハルちゃん達、明日から存分に遊べるよ」

「俺もそう思う、もう年貢米を差し出すこともないし毎日白いご飯が食べれると思う」

「うん・・・そういう情景が浮かび上がるね」

そういいながら夕食を終えた

今頃オハルちゃん一家も夕食をしているのかな

今夜は一段と庭が美しく見えた

<<<大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃんたち、ありがとう、オハル、タロウ兄ちゃんとジロウ兄ちゃんとトトカカ様に会えたよ>>>

「え・・今の声は、オハルちゃん?」

「おっちーーー、聞こえたぞ」

「私も聞こえた」

「俺もだ」

<<<あなたたちのおかげで子供たちに会えました。私たち親は子供たちを探していました。なかなか見つからずあきらめていました、そこでお狐様に子供たちに会いたい、と頼みました。いろいろな事象を起こしてごめんなさい、まさかあんな大変な事故を引き起こすとは夢にもおもいませんでした>>>

「今度はオハルちゃんのカカ様かな?」

「だな」

<<<大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃん、本当にありがとう、オアキ・・・心が弱かった・・・自分の子供まで巻き添えにして水の中に入ってしまった。魂を上狐様に救い上げてもらいました。

狐として自分の子供を巻き添えにした責任もありせめて・・・タロウ・ジロウ・オアキ・オハルの兄妹に「夢」を見させてほしいと頼みました。運命は変えられないが「夢」を見させることはできるということで3日分の時間をもらいました。

本当にあの3日間はうれしかったです。戻ってからお寺に行きました。でも・・・あなたたち大きなお兄ちゃん・大きなお姉ちゃんたちはいなかった。いくら和尚様に尋ねでも「知らない」と言われ、あの3日間は「夢」だったんだと自分で納得していました。

でも自分の首にかかっているお守りの中身を見て「現実」だったんだと。

私も色々な人生を歩むことができました

人生は短ったけれどオハルやタロウ兄ちゃんやジロウ兄ちゃんたちがいた時間がオアキには一番幸せな時間でした

本当にありがとう」

「わぁ!オアキちゃんの声だ」

「おっちーー、美人のオアキちゃんの声だぞぉーー」

「オアキちゃん・・・やはり・・・」

<<<大きなお兄ちゃん・大きなお姉ちゃん

私たちの分よりも幸せになったね

私たち兄妹がちゃんと見守っているよ

もし悩み事や相談事があるならこのお寺に来てほしい

悩み話を聞かせてほしいな

オハル、小っちゃいけどオアキお姉ちゃんと一緒に力になるからね

それと必ずお盆の週間だけは誰でもいいからこのお寺に来てほしい

約束だよ

あ!!もうそろそろお迎えが来る

私たち家族と無縁仏さんたち

やっと天国へ行けるよ

来年のお盆にまた会いたいな

それまでは元気でいてね、オハル・・・また大きなお兄ちゃんと大きなお姉ちゃんに会いたい・・・

>>>

「オハルちゃん・・・・分かった約束する、この4人の中の一人は必ずお寺へ行くからね」

「おっちーー、わかったぞぉーー」

「私も約束する」

「俺もだ」

自然と涙が出てきた

たった3日間という短い時間だったけれど

本当に会えてよかった

ふと山を見ると狐火の列が神社に向かって並んでいた

先頭の6個の明かりは・・恐らくオハルちゃん達だろう

そのあとに続く狐火は無縁仏達だろう

なんか「おっちーー、おっちーー、とオハルちゃんが山を歩いているような気がした」

やっと肩の荷が降りた・・・ような気はする・・・

気のせいかな・・・まだなにかあるような気がしてならない・・・

というのもあの事故・・・オアキちゃん親子いやお狐様が引き起こしたのか?

4人が同時に白昼夢など見るものなのか・・・

今でもおじさんの家から出た記憶がない

他の3人も同様

特にS子のずば抜けた記憶力でも記憶がないという

いずれ・・・近い将来・・・分かるような気はする

さて

明日からはまたせせこましい生活が待っている

でも来年のお盆にオハルちゃん達に会える・・

Concrete
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